「頼れる居場所を失う」育休中の母親から産後うつなどを感じる保護者ら 浦添市、子育て支援拠点を廃止へ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
子育て支援センター「ほるとの家」で過ごす乳幼児やその保護者ら=3日、浦添市牧港

 今月3日、1歳7カ月の娘を連れて子育て支援センター「ほるとの家」を訪れた女性(35)は、目の前で歩き回る娘に注意を払いつつ顔見知りの母親たちと世間話に興じていた。ほるとの家は女性にとって「ほっとできる場所」だ。「育児に行き詰まった時に先生や他のお母さんたちと会うことで精神的に助かっている」と語る。

▼浦添市、子育て支援センター廃止へ 直営を1カ所に集約 利用者は反発、存続訴え

 

 3年前に流産を経験し、心も体もぼろぼろだった時、たまたま訪れたのがほるとの家だった。「毎日生きていくのが必死だった。わたしはここに来て助けられた」

 子育て支援センターには日々、育休中の母親から産後うつ、孤独を感じる母親などさまざまな悩みや事情を抱える保護者が利用する。頼れる人がおらず、生後間もない赤子を抱えて施設を訪れる保護者も少なくない。

 ほるとの家の職員として16年目を迎えた國仲恵利子さん(50)は、これまで多くの困難を抱える母親らと向き合ってきた。「支援センターは保護者にとって気軽に安心して来られる大事な居場所だ」と説明する。

 週に2日程度、ほるとの家を利用する又吉渚沙さん(27)は熊本県出身。回りに頼れる友人は少ない。元々、保育園に娘を預け、仕事復帰する予定だったが、申請した保育園は全て落ちた。「センターは好きな時に利用できて好きな時に帰れる。ものすごくありがたい場所で、なくなると困る」と声を上げる。

 ほるとの家を運営する、へいあん福祉会の平安常治理事長は「保護者と職員との信頼関係は深く、多くの保護者がここで子育てに関する不安や悩みを打ち明けてきた。支援拠点事業とこども園の二者択一ではなく、双方が連携し、よりよい子育て支援を充実させるべきではないか」と話す。

 浦添市に対する反発や困惑は市外にも広がっている。県内の子育て支援センターの職員らでつくる、沖縄・地域子育て支援センター連絡協議会副会長の嘉陽理子さんは「浦添市は支援拠点事業の重要性を認識していない」と指摘する。拠点施設は悩みを抱える保護者に寄り添い、支えることでこれまで多くの命を守ってきたことを強調し「(こども園と)事業が類似するから廃止ではなく、今あるものを残しつつ子育て支援の『質』を上げていくべきだ」と語った。
 (吉田健一)


【関連リンク】

▼学童利用、どうなる? 浦添市が学童クラブ運営者に施設利用不認可と補助金打ち切りを通知

▼学童クラブ利用停止、新規事業者を選定へ 浦添市来月上旬までに 保護者は不信感「子どもの気持ちを考えて」

▼学童クラブ問題、保護者9割が支援継続を求める 浦添市の方針に「反対」 保護者会アンケート

▼偕生会のエンカレッジ鏡原保育園が閉園、園児は転園で調整へ 賃料上がり運営困難に