「生きた証、尊厳を守りたい」 部活高2自死から2年 息子の短い人生に向き合って 沖縄県を提訴した遺族の思い


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県提訴のため那覇地裁へ入る池味エリカ弁護士(中央)ら=9日午前、那覇市樋川

 「息子が生きた証しや尊厳を守りたい」。県立コザ高で部活動主将だった男子生徒=当時(17)=が2021年1月、元顧問から執拗(しつよう)な叱責(しっせき)などを受けて自ら命を絶ち2年。家族を失い悲しみに暮れていた遺族が9日、県を相手に訴訟へ踏み切った。遺族は姿を現さなかったが、代理人弁護士を通じてコメントを発表。文面からは、息子の短い人生に向き合うよう求める切実な思いがにじむ。

 池味エリカ弁護士が提訴後の記者会見で読み上げた遺族コメントは1220文字。「指導者からの暴言や侮辱も明らかな体罰だということ。指導という名の執拗なパワーハラスメントがあったと認めてほしい」とし、過度な指導が息子を「指導死」に追いやったと訴える。

 「温厚で友だち思いの優しく、懐の大きい息子」だった。小学1年から競技を始めて夢中になり、元顧問の誘いがあり同校へ。ところが息子に対する元顧問の言動は次第に厳しくなった。「暴言にも理不尽な叱責にも我慢し、前向きに頑張ってきたことが認められず、さぞかし悔しかった、無念だった、孤独であったと思います」

 入学時に見せていた、楽しそうに部活の話をする笑顔は消え、部屋にこもることも。将来の夢は学校の先生だったが、その夢はもうかなわない。

 コメントの締めくくりは「部活を引退して車の免許を取って、大学に行って、好きなことをたくさんできる充実した人生だったのだろうと思うとやりきれない思いでいっぱいです」。希望に満ちたはずの人生が突然失われた遺族の、深い悲しみがあふれている。


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