在京大手紙の産経新聞がインターネットのウェブサイト上で公開した記事をめぐる名誉毀損(きそん)裁判の判決で、東京地裁が名誉毀損を認め、記事削除を命じた。提訴した元宮古島市議の石嶺香織さんは「削除されない限り被害が続く」とし、拡散されやすいネット記事の加害性を指摘。宮古島の軍備強化に反対の声を上げていた点にも触れ、「なぜこのようなことが起こったか。背景にも目を向けてほしい」と訴えた。
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「記事を書かれた当事者として、ずっと被害が続いているという心境だった」。東京地裁での判決後に取材に応じた石嶺さんは、ネット記事の影響に翻弄(ほんろう)され続けたこれまでの日々を振り返り、こう吐露した。
産経新聞のウェブサイトに記事が掲載されたのは、2017年3月22日。県営団地の入居をめぐって石嶺さんが「違法な行為をした」との印象を与えかねない内容だった。内容は「完全なデマ」とするが、在京大手紙が取り上げた影響は大きかった。記事は拡散し、多くの中傷にさらされた。石嶺さんは「記事が真実として読まれる」と指摘し「削除されても一度広がったデマは完全に消えない。被害の大きさというのは本当に重大だと感じる」と訴えた。
なぜ「デマ」の標的になったのか。代理人の神原元弁護士は「基地建設反対運動をした市議に対する不当なデマ攻撃だった。落選にまで追い込まれた。日本の民主主義をゆがめる由々しき問題だ」と語気を強める。
石嶺さんも自身が自衛隊基地へのミサイル配備に反対の声を上げていたことと無縁ではないと感じている。「デマ記事を書いてまでもふさぎたかった声は何か。島での暮らしを守るために軍事化に反対することすら許されなくなっている」と訴えた。
(安里洋輔)
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