90年前の運転免許証、パスポートのような黒い冊子に金色の文字 沖縄市の伊禮門さん「父の形見」


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父・清市さんが約90年前に取得した運転免許証を今でも大事に保管する長男の伊禮門清光さん=3日、沖縄市宮里

 【沖縄】沖縄市に住む伊禮門清光さん(80)は、父の故・清市さん(享年82)が1935年に大阪で取得した運転免許を今でも大切に保管している。パスポートのような黒い冊子には、金色の文字で「自動車運轉免許證(うんてんめんきょしょう)(小型免許)」と記されている。今では珍しい約90年前の免許証は、正月や旧盆に集まった家族や親戚たちを喜ばせている。

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 清市さんは1894年に与那城村(現うるま市与那城)で生まれた。就職のため大阪に移ると、配達の仕事を始めた。運転免許は仕事のために取得し、三輪車を運転していたという。

 当時はまだ珍しかった運転免許。清市さんの小型免許は、小型二輪や小型三輪などが運転できたとみられる。免許証の中には兵役を証明する年度や官等級などを記す欄があり、時代を物語る。清市さんは生前、よく運転免許証を指さし「子や孫に見せなさい」と話していたという。

故・伊禮門清市さんが1935年の大阪で取得した運転免許証。パスポートのような冊子型で、兵役を記すページもある

 清市さんは結婚を機に沖縄に戻って来たが、沖縄では車を運転することはなかった。伊禮門さんは「働き者の父だった。三輪車で何を運んでいたのだろうか」と想像を膨らませる。毎年親族が集まる時には、この免許証を広げる。「みんなびっくりするよ。思い出話にも花が咲く。これからも形見として大事にしたい」と目を細めた。

 (石井恵理菜)


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