自由に動いてすばやく縮む
干潟を歩いたり、海でスノーケルやダイビングをしていると、岩の隙間から伸びている長いひも状の生き物を見つけて、これ何ですか?!と聞かれることがあります。その時は先っちょにご注目。1本の長いひも状なら、ヒモムシの仲間かもしれません。でも、先っちょが2またに割れていたら、それはボネリムシの仲間です。
ボネリムシって変わった呼び名ですが、日本語ではなく学名をそのままカタカナにした名前です。ユムシ動物というグループの仲間で、ぽよんと柔らかく膨らんだ体は、砂や岩の中に隠れて見えません。見えているのは、餌を取るために長く伸ばした口先=吻(ふん)です。
食べているのは、砂に混ざった有機物。砂の中には、海藻のかけらや、生き物が出した粘液などいろいろな有機物が混ざっているので、砂の汚れを食べているようなものですね。
この吻が、本当に長い!体の何倍もの長さに伸びていきます。伸ばした吻は、ちょっと触ったり光を当てたりする刺激で、素早く引っ込んでしまいます。でも、これは体の中に巻き戻されているのではなく、縮んでいるだけ。つまり、口の中から舌を長く出しているのではなく、くちびるがものすごーく長く伸びている状態、というわけです。
こんなに長く伸びて、自由に動き、素早く縮められる素材、人工的には作れないんじゃないかな。ボネリムシの吻は、すごい機能のくちびるなんです。
Vol. 62 ボネリムシの仲間
Bonelliidae spp.
● 目:キタユムシ目 Echiuroidea
● 科:ボネリムシ科 Bonelliidae
● 属:不明
動画撮影:
ボネリムシの仲間(青緑色) 2023年3月8日(浦添市 伊奈武瀬)
ボネリムシの仲間(褐色まだら) 2023年3月7日(浦添市 西海岸てぃだ結の浜) 2023年3月8日(浦添市 伊奈武瀬)
注:青緑色の個体はボネリムシ Bonellia viridis、褐色まだらの個体はトゲナシボネリムシまたはオオボネリムシ Ikedella misakiensis と思われますが、情報が少なく確証がないので、今回は「ボネリムシの仲間」としました。
動画撮影・編集&執筆
鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)
琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)
東洋大、琉球大卒、福井県立大大学院修了、東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。沖縄の海辺を考える「里浜22」や、温暖化対策に取り組む「ゼロエミッションラボ沖縄」でも活動中。
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