腕をフリフリ、ウデフリクモヒトデ
春の海に、貝やモズクを採りに来る人が増えてきました。そんな時、岩陰に短くトゲトゲしたものが見えて、これ何?危ないもの?とよく聞かれます。でも、これは大丈夫。クモヒトデの仲間です。クモヒトデ類は、干上がるくらいの浅瀬から水深数千メートルの深海まで、世界中の海底にいます。彼らが食べるのは、死んだ生き物や、海底に溜まった有機物。そんな中で、ちょっと変わった餌の取り方をするのが、ウデフリクモヒトデです。
ウデフリクモヒトデは、トゲトゲした白黒だんだら模様の腕を、浅い潮だまりの岩陰からのぞかせます。この腕、簡単に切れてしまうので、決してつまんだり引っ張ったりしないでくださいね。実は、切れた腕は、時間が経てばまた再生して伸びてきます。
潮が引いて再び満ち始める時間、ウデフリクモヒトデは裏返しにした腕を水面に伸ばし、左右に振り始めます。すると小さな水流が起きて、水面に浮かんだ泡などが集まってきます。この泡は、浅瀬の生き物たちが出した粘液などの集まり。水の汚れのようなものですが、これがごはんになるんです。まるで水面の拭きそうじ!
動物はフンやオシッコも出すし、他の生き物を捕まえて食べれば、死骸のかけらや食べかすも出ます。でも、それをまた、お掃除屋さんが食べて片付けてくれる。生き物同士のつながりって、すごいです。人間も、自然が片付けられないごみは出さないようにしなくちゃね。
Vol. 14 ウデフリクモヒトデ
Ophiocoma scolopendrina
● 目:クモヒトデ目 Ophiurida
● 科:フサクモヒトデ科 Ophiocomidae
● 属:ウデフリクモヒトデ属 Ophiocoma
動画撮影:ウデフリクモヒトデ 2017年7月7日(恩納村)、2019年2月21日(南城市)
動画撮影・編集&執筆
鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)
琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)
東洋大、琉球大卒。東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。手作りぬいぐるみで海を伝える、あーまんシアターも主宰。
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