観光客でにぎわう沖縄県恩納村の村立博物館前にある、小さな干潟。海とは国道で隔てられているけれど、道路下にある水路から、ちゃんと潮が出入りしています。実はここ、干潟でくらすカニたちにとっては絶好の住みか。荒波が来ない穏やかさや、地面の具合が、巣穴を掘ったりご飯を食べたりするのにちょうど良いのでしょう。
干潟の周りにある遊歩道から地面を眺めると、いるわいるわ…。たくさんのシオマネキたちが、さかんにハサミを振っています。片手が大きいのはオス。ハサミ振りは、自分の力強さをメスにアピールする求愛行動です。でも、シオマネキのハサミって、体に比べて不釣り合いなほど大きいと思いませんか?自分の甲の幅よりも大きなハサミを振り上げるって、小さな体なのにすごい筋肉とバランス感覚だなと思います。
大きなハサミは、オス同士の力比べや、巣穴の横取りにも使います。巣穴は、メスを呼び込んで交尾と産卵をしてもらう、大切な場所。巣穴にオスが近づくと、お互いのハサミを見せ付け、時にはハサミ同士を噛み合わせて、力比べをします。勝負はかなり素早く、無駄なケンカはしません。どうしても相手が引かないときは、ハサミを振り上げて相手を放り投げることもあるけれど!
オスにとっては、良い巣穴を持ち、メスをそこに引き入れるのが使命。干潟の潮が引くたびに、今日もメスと巣穴をめぐるオス同士の戦いが続くのです。
Vol. 6 シオマネキの仲間
Uca spp.
● 目:十脚目 Decapoda
● 科:スナガニ科 Ocypodidae
● 属:シオマネキ属 Uca
動画撮影:
オキナワハクセンシオマネキ 2018年8月10日 場所:仲泊(恩納村)
ヒメシオマネキの仲間 2018年8月10日 場所:仲泊(恩納村)
ルリマダラシオマネキ 2018年8月10日 場所:仲泊(恩納村)
動画撮影・編集&執筆
鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)
琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)
東洋大、琉球大卒。東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。手作りぬいぐるみで海を伝える、あーまんシアターも主宰。
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