坂本龍一さん死去、「平和を」美しい旋律と言葉残し… 「辺野古 無駄につぎ込むのか」「アートがなくては生きられない」


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朗読する吉永小百合さんとピアノを弾く坂本龍一さん=5日、宜野湾市の沖縄コンベンションセンター劇場棟(喜瀨守昭撮影)

 美しいメロディーを生み出し、世界的に活躍する音楽家の坂本龍一さんは、沖縄に思いを寄せ、名護市辺野古で進む新基地建設に強く反対した。米軍基地や原子力発電所などの負担が、限られた地域に集中していることを指摘して、民主主義に反する施策を進める日本政府を批判していた。2020年1月に宜野湾市で、俳優の吉永小百合さんとチャリティーコンサート「平和のために~海とぅ詩とぅ音楽とぅ」を開催して、平和を願う気持ちを発信した。

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 20年のコンサートで沖縄を訪れた際、坂本さんは辺野古の新基地建設の現場を視察した。船に乗って約1時間半かけて、大浦湾や辺野古沖の埋め立て現場近くの海域を巡った。サンゴの種類や工事の進み具合を確認し、透明度の高い海とサンゴの美しさに「素晴らしい」「これはすごい」と感嘆した。

 視察前には「この機会に改めて辺野古の問題、基地の問題を多くの人々に考えてもらえたら」とメッセージを発信した。現場を確認して「自然は一度壊したら元に戻せない。美しい自然を壊してまで造る意義はもちろんない」と、基地建設に反対する意思を強く示した。県民の意思に反する形で工事が進められている状況に「この島にこれだけの基地があることが異常。本土と沖縄の間に差別があるように思えてならない」と訴えた。

 コンサートでは、吉永さんが平和の尊さを伝える詩を朗読して、坂本さんがピアノを演奏した。恒久平和への願いを、会場を埋め尽くした観客と共有した。坂本さんは「沖縄で演奏するのは初めてだと思う。やっと夢がかなった」と話した。

 20年5月には本紙インタビューに応じコロナ禍で苦境が続く芸術活動について「音楽やアートがなくては生きられない。そういう生物でしょう、人間は」と楽観視した。

 一方で「辺野古の基地は常識的に考えると完成しない。貴重な税金を無駄につぎ込むのか」と政府の姿勢を批判した。米軍基地などの安全保障を沖縄に、原発などエネルギー供給源の負担を福島などと、限られた地域に集中させていることも指摘。「日本の民主主義は非常に特殊で、ねじれていると感じる。政府上層部が反民主主義的で、独裁的だ」と強調し、政府の在り方を疑問視した。「非民主主義」である政権に対し、日本国民の多くが抗議しないことに「残念ながら民主主義が定着していないから」と言い切った。

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