prime

教員不足を保護者と一緒に 千葉では県民の会を発足し「社会問題」として訴える<先生の心が折れたとき>第3部(4)千葉の「県民の会」(上)


教員不足を保護者と一緒に 千葉では県民の会を発足し「社会問題」として訴える<先生の心が折れたとき>第3部(4)千葉の「県民の会」(上)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
駅周辺でマイクやプラカードを持ち、教員不足問題を訴える「教員未配置を考える会」=2022年10月22日、千葉県柏市の柏駅周辺

 教員が不足し担任が配置できない問題は全国的に起きている。そのような中、千葉県では、教員不足問題を教職員や保護者らが協力して改善する土壌が生まれつつある。

  ◇  ◇  ◇

 「担任不在が何カ月も続いている学校がある」。2016年、全教千葉教職員組合は組合員から寄せられた情報に驚き、現状把握を急いだ。県教育委員会に問い合わせると、同年8月時点で22人の未配置があることが分かった。当時はこの人数が現在の未配置420人(23年1月)にまで膨れ上がるとは想定していなかった。

 組合は詳細な記録を毎月取り続けている。23年2月時点の記録では、未配置417人のうち最多の欠員理由は育児休暇で114人、次いで定数内欠員が96人、療養休暇が83人、産前産後休暇が81人などと続いた。

 欠員理由の内訳を明らかにしていない沖縄県教委とは異なり、同組合は千葉県教委に質問し、毎月回答を得ている。

 組合は欠員の理由を育休や産休の代替教員が確保できないことや、定数内欠員の多さなどから「なり手不足」などが大きな原因だと考えた。同時にこれらは「今までと同じような組合活動で解決できるレベルではない」と思い至った。「子どもの学習権を守る責任を、国や県が果たしていない。社会問題だと県民に広く伝える必要がある」と考え、県民の会発足に踏み出した。

 ■当事者として

 発足に向けて一番の不安は「保護者らに、教員不足問題を自分事として認識してもらえるか」だった。船橋市内の小学校担任を務める小山田浩之さん(47)は「教育現場の窮状は保護者に伝わりにくい」と感じている。「教員は子どもたちを目の前にすると、本当は不在の先生のフォローをする余裕はないのに無理をして何とかする。保護者には『何とかなっているんだな』と見られてしまいがちだ」。市川市内の小学校教員、吉井広人さん(41)は「だからこそ、教員と保護者が一緒に考える環境づくりが必要だと思う。特に教員不足は子どもに影響が出る。保護者も当事者の一人だ」と話す。

 組合は、退職教員やPTA団体など、各方面に問題の根深さと「一緒に考える」必要性を訴え続け、22年7月末、教員不足問題を考える教育フォーラムを初開催した。現職教員や保護者らも合わせて100人以上が集まった。この日、組合は参加者に呼びかけて県民の会を発足。今年2月に開催した教育フォーラムにも70人超が参加、「県民全体で考え、解決を目指す」運動体をつくった。