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「沖縄ホテル」へめんそ~れ 創業82年の老舗、5月に全館再開 コロナ禍を経て行き着いた決断とは


この記事を書いた人 Avatar photo 玉城江梨子
「サービスに磨きをかけていきたい」と話す沖縄ホテルの宮里公宜社長兼総支配人(左端)と従業員たち=那覇市大道の沖縄ホテル

 コロナ禍で15カ月の休業を余儀なくされた1941年創業の沖縄最古の観光ホテル「沖縄ホテル」(那覇市)が生まれ変わろうとしている。休業の間に建物を改装し、事業も再構築。メーンターゲットを長期宿泊の個人客へ変更し、修学旅行など団体客の受け入れをやめた。接客サービスや沖縄の文化発信に力を入れると同時に、地元の飲食店関係者や住民が足を運びやすい場所にし、地元密着型のホテルに変貌する。

 ■らしさの追求へ、修学旅行の受け入れもやめる

 休業の間、自社の強みを見つめ直した。行き着いたのは、「沖縄」を冠したシンプルな名に見合う「沖縄」らしいホテルとであること。そして、宿泊客から評価の高い接客サービスをさらに強化し、客の満足度、宿泊単価を高めることだった。

 一時は客の7割を占めた修学旅行の受け入れをやめるのは大きな決断だった。宮里公宜社長兼総支配人は「修学旅行は一度に多くのお客さんに対応しないといけないため、私たちの強みであるサービスの良さを発揮しにくかった」と分析する。

 メーン客層を長期宿泊の個人客に設定したことで、沖縄の食材を調理したいというニーズも見えてきた。レンタルキッチンを設置し、市場などで購入した食材を調理できるようにする。近隣の居酒屋や菓子店が顧客向けに料理教室を開くことなども可能にする予定だ。

沖縄ホテルで開かれた「さんしんの日」イベントで演奏する参加者=3月4日、那覇市大道

 沖縄の文化発信にも力を入れる。県三線製作事業協同組合と共同で「ワンコイン三線演奏体験」を開催しているほか、全従業員がウチナーグチ講座を受講し、「ハイサイ」「ハイタイ」とあいさつしている。

 ■宿泊客にも従業員にもワクワクを

 コロナ前から人手不足だった観光業界。急速に観光需要が回復し、不足感は以前より増している。沖縄ホテルも例外ではない。白玉悟副支配人は「今いる従業員にとって働きがいのある環境を作ると同時に、新人がすぐに業務に慣れるようにする必要がある」と指摘する。

 人材定着は以前からの課題だ。繁忙期は他部署に応援に入ることもあるが、業務がマニュアル化されておらず、人によってやり方が異なることがストレスとなり、離職の一つの原因になっていた。

 人材定着と作業の効率化を図ろうと、業務を棚卸しして、それぞれの業務についてスキルマップを作成した。その上で、チェックイン業務、客室清掃などそれぞれの基本的な作業を映像でマニュアル化した。

 昨年9月から一部営業を再開。現在は5月1日の全館オープンに向けホテル棟を改装中だ。ペンキ塗りなどは従業員が担う。従業員の1人は「最初はなんでペンキ塗り?と思ったけど、やり始めたら楽しい」と笑顔を見せる。「このワクワク感が伝わればいい」と白玉副支配人。創業82年の老舗ホテルの再出発が始まる。 (玉城江梨子)