朝ドラ効果、来県者増が追い風に 泡盛出荷量18年ぶり増 回復継続へ「今年が正念場」


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県酒造組合の佐久本学会長(右)と新垣真一専務理事=13日、浦添市の西洲卸団地ホール

 日本復帰50周年や世界のウチナーンチュ大会の開催のほか、NHKで朝ドラ「ちむどんどん」が放映されるなど沖縄が注目を浴びた年でもあり、来県者増などによって代表的な県産品である泡盛の消費を押し上げた。今年はバスケットボールのワールドカップが予定されるなど、引き続き外国人を含め多くの来訪が見込まれ期待が広がる。一方、酒造所の経営を取り巻く状況の厳しさに変わりはなく、出荷増の維持にハードルは低くはない。

抑制の「反動」

 感染防止策が緩和され、これまで抑えられていた消費の機会が増えた「反動」が18年ぶりの出荷増の主要因とみられている。ただ、出荷量はコロナ感染が初確認された20年とほぼ同水準。コロナ禍前の19年に比べれば86%にとどまる。
 

 消費の増加に向け、業界は具体的な施策としてターゲットを絞ったPRを検討している。今後、着実に展開できるかが鍵を握る。

 県外向けにはあえて「脱・沖縄色」を意図したプロモーションで、沖縄料理店だけでなく、各種料理の専門店での提供のほか、自宅でも日常的に楽しめるコンセプトを強調する。

 組合は、感染防止策を取りながら販売促進や知名度向上の事業を展開した月には売り上げが伸びたと説明。細かな企画展開が販売促進につながると自信を深めてもいる。

 海外向けには21年に設立した「琉球泡盛海外輸出促進部会」を軸に、国や県と協力しながら海外輸出振興策を展開。一定の伸びを見せている。

 24年度にはユネスコ無形文化遺産登録を目指しており、酒造組合の佐久本学会長は「魅力を海外へ広くPRしていきたい。日本の酒といえば日本酒というイメージが強いかもしれないが、沖縄に伝統ある蒸留酒があることを世界に知らせたい」と意気込みを語った。

踊り場

 18年ぶりの対前年増の出荷量だが、その最後の年で、過去最高を記録した04年は2万7000キロリットルでほぼ倍を出荷していた。生産量も04年は3万キロリットル台に乗せたが、22年はほぼ半分の1万4千キロリットルとなっている。

 生産を担う泡盛製造業者の経営状況は悪化している。県内44社の営業損益の合計は20年度が2億9000万円の赤字だった。これが21年度は5億500万円に拡大した。

 営業利益が1億円を超える酒造所が復活する一方で30社が赤字となっている。コロナの影響による受注の急減などが要因とされるが、収益の構造なども業界に共通する課題と言えそうだ。

 さらには酒税軽減の特例措置が24年から段階的縮減を経て32年5月に廃止される。組合の新垣真一専務理事は「18年ぶりの出荷量増加とはいえ、現時点では踊り場に立ったという印象。浮かれてはいられない。今年が正念場と考えている」と表情を引き締めた。

 出荷増の傾向を維持できるかは、特例措置の縮減に耐えうる体力を備えることができるかにもつながりそうだ。
 (普天間伊織)