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感謝して、驕らず、徳を積む 宇田悦子・フードリボン代表取締役社長 <仕事の余白>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 5年前、大宜味村の産業祭りに初参加した時のことです。シークヮーサーの果皮粉末を配っていたら、一人のおばあから「あなたたちのやっていることは素晴らしいわ」と声をかけていただきました。後日、お宅にお邪魔した時、シークヮーサーの果皮を粉末にしてアンダギーなどに入れ、余すことなく工夫して楽しむ暮らしに感動しました。

 それから、出会ったおじいやおばあからたくさんの話を聞きました。昔は収穫したシークヮーサーをカゴいっぱい背負って、漁業が盛んな隣村の魚と交換し暮らしを支えてきた時代があった話。カラキの樹皮を漬けたリキュールを振る舞ってくれた時は、昔は自生するカラキを見つけたら秘密の場所にして葉も樹皮も貴重にしていた話。

 土地の植物・生態系と共存し工夫して暮らしてきた軌跡をここには書ききれないほど聞くにつれ、宝にあふれた地域だと思いました。水や土地の神様に敬意を忘れずにとも伝えられ、目には見えない大切なことだと教えていただきました。

 今でも思い出すと恥ずかしいことは、なぜこの仕事をしているのか?と聞かれた時に「大宜味村のために」と言った瞬間のこと。おばあを前に顔が熱くなり赤面したのは自分の驕(おご)りに気づいたからでした。事業が上手くいかない時も応援してくれた人がいたことに感謝を忘れません。自然の恵みに感謝し、驕り高ぶることなく、工夫して楽しみながら徳を積む。このことを学ばせていただき、自分にとっての戒めにしています。