礎なぞり涙をこぼした祖母、重なった78年前と今 平和の詩を朗読する平安名さん 「平和への思い伝えていける」


この記事を書いた人 琉球新報社
「平和の詩」の朗読者となり、記者会見する平安名秋さん=14日午後、那覇市樋川(小川昌宏撮影)

 「慰霊の日」の沖縄全戦没者追悼式で平和の詩を朗読するつくば開成国際高校3年の平安名秋さん(17)=西原町=が14日、那覇市樋川の同校で取材に応じた。中学生のころに糸満市摩文仁の「平和の礎」を訪れた際、祖母(89)が戦争で亡くなった兄の名前に触れ、涙を流す姿が目に焼き付いた。78年前の沖縄戦と現在の国際情勢を重ね、沖縄のチムグクル(肝心)という言葉を通して「沖縄戦を経験したからこそ、平和への思いを伝えていける」と語った。

 詩は、「溶けかけたアイス」という自身の幼いころの夏の平和な思い出から始まり、礎に刻まれた「兄」にそっと触れる「おばぁ」の姿に思いをはせ、平和とは何かを問いかけていく。

 祖母は平安座島(うるま市)出身で7人きょうだいの4番目。沖縄戦の時は、まだ本島との橋がかかっていない海を、弟をおぶって逃げ惑ったと当時の体験を聞いたことがある。そんな祖母は10歳近く年の離れた長兄を慕っていた。だが、長兄は県外の大学に進学し、その後海軍に入り亡くなった。

 平安名さんは学校の平和学習で戦争体験者らの話を聞く機会はあったが、自分の祖母が礎を前に涙をこぼす姿を初めて見た時に「衝撃を感じた」。最近は、戦争や平和について同級生らとより身近に話すようになったという。

 一方で、ロシアによるウクライナ侵攻などの国際情勢に触れ「沖縄戦のようなことが今起きている現実」について考え、「それこそ平和って何だろうと思ったことがきっかけだった」と「今、平和は問いかける」と作品名に思いを込めた。

 祖母の願いは「戦争はいけない。平和が一番」。祖母や支えてくれた周囲に感謝しながら、「詩を通して戦没者、遺族が少しでも心安らかになってほしい」と、慰霊の日の朗読に臨む。
 (座波幸代)

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