食中毒が気になる季節、対策は大丈夫? 沖縄特有のタイプも…押さえておきたい予防の3原則


この記事を書いた人 Avatar photo 大城 周子

 まもなく本格的な夏がやってくる。暑くなるにつれ増えてくるのが食中毒だ。激しい下痢や腹痛、嘔吐(おうと)などを引き起こし、命の危険が伴うこともある。ただ、ひとくちに食中毒といってもその種類や症状はさまざまで、原因と対策を知っておくことが大切だ。沖縄県では今年に入って5月までに、既に12件の食中毒が発生している。本格的な“食中毒シーズン”を前に、高温多湿な沖縄の夏で特に注意しなければならないことは?対策を取材した。

(イメージ写真)

 

 そもそも食中毒とは-。細菌やウイルスがついた食品を口にしたり、毒を持つ動植物を食べたりすることによって、下痢や腹痛、発熱、嘔吐などの症状を引き起こす病気の総称だ。その原因によって「細菌型」「ウイルス型」「自然毒」「寄生虫」「化学物質」の5タイプに分けられる。

■最も多い原因は?

 中でも細菌(カンピロバクター、ウエルシュ菌、サルモネラ菌など)による食中毒が多くなるのは、気温が高くなって菌が増殖しやすい6~9月ごろ。まさにこれからのシーズンは「細菌型」による食中毒のリスクが高まる。

 

原因別にみた食中毒の発生件数(2022年、全国)

 一方、「ウイルス」による食中毒の代表格はノロウイルス。以前は生ガキが出回る冬に多かったが、最近は1年を通して発症している。

 「自然毒」はキノコや魚のフグなど、有毒な物質を含む食材が原因の食中毒だ。厚生労働省によると2022年に国内で食中毒により亡くなった5人のうち4人が、自然毒が原因だった。細菌などに比べて発生件数は少ないが致死率が高い。

 「寄生虫」による食中毒は近年増加傾向にあり、そのほとんどがアニサキスという線虫が要因だ。アニサキス幼虫が寄生したサバやアジ、カツオを生で食べることで幼虫が胃壁や腸壁に侵入し、激しい腹痛や嘔吐などの食中毒を引き起こす。

 2022年、沖縄県内では20件の食中毒が発生した。食中毒の原因となった食品を食べた人が計536人、そのうち食中毒となった患者数は139人だった。
 ただし、県保健医療部衛生薬務課の山内努さんは「この20件はあくまで確定できた件数。調査に協力してもらえなかったり、メニューが確定できなかったりと、疑いのままで終わるものも多い」と指摘する。

スケトウダラから取り出したアニサキスの幼虫。体長は2~3センチ(国立感染症研究所提供)

■97%の確率で細菌が…

 沖縄県内で過去5年間で発生した食中毒事案102件を調べると、4割にあたる43件がカンピロバクターという細菌によるものだった。

 1件あたりの患者数は少ないものの、発生件数は最も多い。カンピロバクターは感染すると下痢や腹痛、吐き気などの食中毒症状を起こすだけでなく、感染した数週間後に難病のギラン・バレー症候群を引き起こすこともある。

原因別にみた食中毒の発生件数(2018~22年、沖縄県内)

 カンピロバクターによる食中毒は、鶏の刺身や湯引き、たたきなど加熱が不十分な鶏肉を食すことが原因となる。鶏のレバーなどには97%もの高い確率でカンピロバクターが見つかっている。少量の菌でも食中毒を起こすため、加熱の不十分な鶏肉料理はとても危険だ。これは食肉加工してすぐの鶏肉も例外ではない。

 山内さんは「『新鮮だから大丈夫』『飲食店で提供されているから安全』ということはない。飲食店も、客の要望があるからといって生肉を提供している側面もある」と指摘。「カンピロバクターによる食中毒は予防できる。鶏の生食を避け、生っぽいと思ったら焼き直すなどを心掛けてほしい」と強調した。

カンピロバクターの電子顕微鏡写真 出典:内閣府食品安全委員会ホームページ(https://www.fsc.go.jp/sozaishyuu/shokuchuudoku_kenbikyou.html)

■クーラーの風に触れるだけで痛みが

 特定の地域でよく発生する種類の食中毒もある。過去5年間に沖縄県内で発生した食中毒のうち、カンピロバクターの次に多かったのが、自然毒による食中毒だ。中でも「シガテラ」と呼ばれる魚類食中毒が多く発生している。 

 渦鞭毛藻(うずべんもうそう)というプランクトンが毒成分のシガトキシンを作りだし、そのプランクトンを食べたウニやカニ、小型魚をさらに肉食の大型魚が食べるという食物連鎖を通じて、大型魚の体内で高濃度に毒が蓄積される。これを人が食べることによって食中毒を引き起こすというのがシガテラの発生するメカニズムだ。

 

シガテラが発生するメカニズム(沖縄県発行のリーフレット「魚類食中毒『シガテラ』を知っていますか?」を参考に作成)

 シガテラの特徴的な症状は、体のだるさやしびれ、ドライアイスセンセーションとよばれる温度感覚異常だ。水に触れたときに電気に触れたようなビリビリした痛みを感じたり、クーラーの冷気が当たると肌に痛みを感じたりする。人によっては数カ月以上症状が続くこともあるという。

 WHO(世界保健機関)によると、世界で毎年数万人がシガテラにかかっていると推定される。熱帯・亜熱帯のサンゴ礁域にすむ毒化した魚を食べることで起きることから、日本国内では南西諸島が主な発生地で、沖縄県内では毎年数件発生している。サンゴ礁の海に囲まれた沖縄特有ともいえる食中毒だ。

慶良間近海で釣り上げられたナガジューミーバイ(バラハタ)

 シガテラを引き起こす魚種はバラハタ(ナガジューミーバイ)、イッテンフエダイ(ヒシヤマトゥビー)、バラフエダイ(アカナー)など。これらの魚を食べると必ず食中毒を引き起こすというわけではないが、毒化しているかどうかは魚の色や味で判断はできない。細菌型と違い、加熱しても毒はなくならない。県衛生環境研究所の調査によると、いずれも大型の個体は有毒率が高いという。
 山内さんは「釣った魚を食べてシガテラになる事例が多い。魚種や魚の大きさが分からないときには食べないようにしてほしい」と呼び掛けた。

■アルコール消毒はどれくらい有効?

 細菌型、ウイルス型食中毒については「つけない」「増やさない」「やっつける」が予防の3原則となる。

 菌を食品に「つけない」ためには、何より手洗いが重要。調理器具、食材もこまめに洗い、肉や魚を切ったまな板・包丁は熱湯をかけて消毒する。他の食品に菌がつかないよう、生ものはビニールに包んですぐに冷蔵庫に入れるなどの対応が効果的だ。

 手洗いの代わりにアルコール消毒をする人もいるが、アルコールでは死滅しない菌やウイルスもいる。山内さんは「汚れている手にアルコール消毒してもそこまで意味がない。手洗いが大切だ」と強調する。

 菌を「増やさない」ことも大切だ。食品に細菌がついていても、食中毒を起こす量まで増えなければ食中毒にはならない。細菌の多くは高温多湿な環境で増える。買ってきた食品はすぐに冷蔵庫に入れること、自然解凍を避け、調理を中断するときは室温に放置しないことを心掛ける必要がある。

 食品や調理器具についた菌を「やっつける」ために必要なのは加熱だ。ほとんどの細菌やウイルスは加熱によって死滅する。特に肉料理は中心までよく加熱することが大切だ。中心部を75度で1分以上加熱するのが目安となる。

 山内さんは「家庭でできる食中毒対策は多い。手を洗う、消費期限などの表示を確認する、調理の順番を考え、できたてを食べるなどの対策を心掛けてほしい」と呼び掛けた。

(熊谷樹)

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