HIVと心理支援 悩み事、寄り添い守る <じぶんごとで考えよう HIV/エイズ>14


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 HIV感染症は、ウイルスを抑える治療薬の進歩によって、通常の生活を送ることが可能な病となりました。そのため、HIV陽性者は通院で医学的ケアを受けるとともに、毎日決まった時間帯に確実に薬を飲み続ける自己管理および対人関係や自身の生き方の主体的選択など、さまざまな課題と向き合いながら、病と共に生きていくことが求められます。

 一方、HIV感染症は社会的な差別や偏見の問題と深く関わってきたため、病名を隠し、生きづらさを一人で抱え込みながら生活している人も少なくありません。心配事を誰にも相談できず、不安が高じて気持ちの落ち込みが強まってしまうと、うまく睡眠が取れず、食欲の減退や意欲・集中力の低下などが起こり、日常生活に支障が出ることもあります。

 医療の場では、医師や看護師、薬剤師、検査技師、管理栄養士、医療ソーシャルワーカー、心理師などの多くの異なる職種が一つのチームを組んでHIV陽性者と関わっています。もちろん、個人情報は守秘義務によって十分に守られます。

 「この問題は病院で相談するものではないかもしれない」「自分のこんな悩みを相談してもいいのだろうか」と思うようなことでも、スタッフは一人ひとりの病状や生活状況を把握しながら丁寧に対応いたします。どうぞ遠慮することなく思い切って相談してくだされば幸いに存じます。

 沖縄県公認心理師協会では、HIV陽性者や関係者の心理支援に取り組んでいます。例えば、HIV陽性者の方々の個別カウンセリング、定期的なグループミーティングの開催、検査相談に従事する医療スタッフの研修、医療チームカンファレンスでの患者理解につながる助言などの活動です。

 セクシャリティなど多様な価値観への共感や理解に向けても、疾患に対する専門的な知識を持った心理師が対応します。ご利用を希望される方は、かかりつけの病院やHIV治療拠点病院の医療スタッフに遠慮なくお声がけください。

 一人ひとりの心の健康増進に寄与できるよう、これからも皆さまと共に考えてまいりたいと思います。

(玉城美波 琉球大学病院医療技術部/沖縄県公認心理師協会 心理師)