生後9カ月の乳児も被害 米兵による性犯罪、まとめ続けて27年 第13版を発行 沖縄・行動する女たちの会


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「沖縄・米兵による女性への性犯罪」第13版を手にする高里鈴代さん=6日、那覇市大道

 米兵による女性の性被害をまとめ続けて27年になる「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」が5月、「沖縄・米兵による女性への性犯罪(1945年4月~2021年12月)第13版」(A4判、千円)を千部発行した。2016年に発行された12版から7年ぶりに版を重ねた。同会共同代表の高里鈴代さん(83)は「年表にある事件は氷山の一角であることが改めて分かった。女性が被害を訴えやすい社会にする必要がある」と話す。

 12版は全27ページだったが、13版は全69ページとなった。県警発行の「犯罪統計書」から強姦(ごうかん)摘発件数を基に、メンバーの宮城晴美さん(73)が県公文書館などで過去の新聞記事から新たに事実確認できた事件や、高里さんらが聞き取った証言を追記し、ページが増えた。

 1949年9月に起きた、親しい米兵に預けた生後9カ月の乳児が暴行された事件では、2018年に乳児の母親の友人から証言を得て、乳児がその事件直後に死亡していたことが分かった。高里さんは「レイプではなく殺人事件だった」と憤った。

 沖縄で刑期を終えた加害者が、米国で再び暴行事件を起こしていたことが判明し、事件の処罰欄に追記した。また、米軍属が2004年に起こした暴行事件で逮捕された際に、保管されていたDNAから1998年にも暴行事件を起こしていたことが判明した事例もあった。

 高里さんは、被害者から直接証言が寄せられたケースもあるとし「被害に遭っても訴え出ない女性が圧倒的に多い。犯罪の被害を受けた女性はどんな思いで過ごしているんだろうか」と、被害女性に思いをはせる。

 「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」は、1995年に起きた少女乱暴事件を機に、「もう絶対に沈黙はしない」という決意のもと発足した。翌96年に訪米に合わせて6ページの初版を作成した。

 高里さんは、犯罪を起こしても米兵が日米地位協定で守られ、その状況が戦後変わらずに続いていると指摘。「これからも調査を継続する。事件の重大さを認識してもらい、暴力を許さない社会をつくると同時に、被害を訴えたときに受け止める社会の体制が必要だ」と話した。第13版の英語版は年内の発行を予定している。
 (上江洲仁美)