涼しい木陰で、のんびりえさ探し
梅雨が明けて、夏本番。気温は30度を超え、日の当たるアスファルトやコンクリートはとても熱くて触れません。でも、日陰に入って風が吹けば、けっこう涼しく感じられます。
それはきっと、生き物たちも一緒でしょう。河口に広がるマングローブ林の地面はずっと日陰。水辺の地面は湿っているので、気化熱が奪われ、地表の温度はそれほど上がりません。そんな木陰の泥干潟で暮らしているのが、アシハラガニや、アシハラガニモドキの仲間たちです。
カニは基本的に雑食性ですが、種類によって肉食寄りや草食寄りがいます。リュウキュウアシハラガニは肉食寄りで、周りにいる小型のカニ類を食べたりします。一方、ミナミアシハラガニやアシハラガニモドキの仲間は草食寄り。マングローブ林にはたくさんの葉っぱが地面に落ちるので、これを食べる生き物にとっては、お菓子の家に暮らすようなもの?
泥干潟を眺めていると、泥に掘られた穴から赤いはさみのカニが出てきて、地面に落ちた葉っぱを巣穴に引っ張り込んでいきます。ヒルギの葉っぱは黄色くなって落ちますが、落ちたてのパリッとしたのよりも、落ちてしばらく経って、茶色く柔らかくなった葉っぱの方が好きみたい。少し分解が進んで食べやすいのかな。ユウナ(オオハマボウ)の花がポトリと落ちると、これもハサミでちぎって食べます。カニたちにとって、マングローブ林は案外グルメなごちそうが降ってくる場所かもしれませんね。
Vol. 66 ヒメアシハラガニモドキ
Neosarmatium indicum
● 目:十脚目 Decapoda
● 科:ベンケイガニ科 Sesarmidae
● 属:アシハラガニモドキ属 Neosarmatium
動画撮影:
ヒメアシハラガニモドキ 2022年9月13日、2023年7月4日(豊見城市 漫湖水鳥・湿地センター)
アシハラガニモドキ 2023年7月4日(豊見城市 漫湖水鳥・湿地センター)
動画撮影・編集&執筆
鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)
琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)
東洋大、琉球大卒、福井県立大大学院修了、東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。沖縄の海辺を考える「里浜22」や、温暖化対策に取り組む「ゼロエミッションラボ沖縄」でも活動中。
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