夏だけの期間限定色
漫湖の干潟の木道に行ってみました。夏の間のほんの一時期、とても色あざやかなカニが揃うからです。それは、シオマネキの仲間たち。
マングローブの木々の根元でまず目立つのは、真っ赤なベニシオマネキ。そして、長いハサミのヤエヤマシオマネキ。ヤエヤマの甲羅は黒やグレーですが、オスの大きなハサミの下側が、鮮やかなオレンジ色です。このヤエヤマシオマネキ、実はこどもの時は色が全く違います。真夏の木道は暑いですが、ちょっと我慢して泥干潟の上に目を凝らしてください。5mmにも満たない、小さくて真っ青なカニが歩いていませんか?これがヤエヤマシオマネキのこどもです。まるで、泥の上に美しい宝石の粒があるみたい。初夏に海に放たれた幼生が、稚ガニになって海から干潟にやってきて、成長する夏の数週間だけ、この色をしています。
全身明るいオレンジ色の稚ガニもいます。こちらはリュウキュウシオマネキのこども。大人は、黒い甲羅に白っぽい襟元が特徴。10年ほど前までは、沖縄本島ではこのカニを見ることはありませんでした。でも、温暖化とともに八重山から分布が北上したようで、漫湖でも普通に見られるようになりました。
シオマネキたちは、潮の引いた時間に泥の上を歩き回って、表面の有機物を食べます。食べながら、時には縄張り争いでケンカしたり、メスを取り合ったり。小さなこどもたちは、そんな大人のカニの足元で、せっせと泥をつまみながら大きく育つのです。
Vol. 18 ヤエヤマシオマネキ
Uca (Tubuca) dussumieri
● 目:十脚目 Decapoda
● 科:スナガニ科 Ocypodidae
● 属:シオマネキ属 Uca
動画撮影:
リュウキュウシオマネキ 2019年8月20日(豊見城市・漫湖)
ヤエヤマシオマネキ 2019年8月20日(豊見城市・漫湖)
動画撮影・編集&執筆
鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)
琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)
東洋大、琉球大卒。東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。手作りぬいぐるみで海を伝える、あーまんシアターも主宰。
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