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コンクリで、まちを「森化」 阿波根昌樹・HPC沖縄代表取締役 <仕事の余白>


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 「コンクリートは人類の救世主だ!」と言えば、「少し、大げさじゃない?」と笑われる。コンクリートとは、セメント、砂、水、骨材などからなる土木・建築材料である。それは強くて丈夫で、経済性にも優れ、古代ローマ時代から現代まで社会インフラ整備に欠かせないものだ。

 今、地球環境の課題解決の手段の一つとして期待されるのが、低炭素コンクリート製造技術である。火力発電所由来の石炭灰やバイオマスの燃焼灰、製鉄所のスラグ、さらには工場の排ガス(CO2)など、産業副産物を利活用(アップサイクル)する技術である。

 普段、これらの厄介者は産業廃棄物のレッテルを貼られ、行き着く先は最終処分場と決まっている。厳重な管理の下、資源化されずに埋もれてしまう。もったいない経済活動である。アップサイクルの取り組みはサーキュラーエコノミー(循環型経済)の未来に繋(つな)がる。

 2025年の大阪・関西万博に向け、アップサイクル技術で作ったカーボンネガティブのCO2固定化骨材をHPCの原材料として使う取り組みを進めている。万博後の未来、街を彩る建物のファサードには、CO2貯留のコンクリートによる標準化の世界が見える。これまで、植林による森化(CO2貯留)の果たした役割のように、街を造るコンクリート内部にCO2貯留が実装されると、都市開発が森化効果の手段に進化する。この取り組みは、脱炭素社会の時代に必要な社会活動になると期待したい。