【大宜味】「お世話になりました。ありがとう」。8月の台風6号の影響で倒れた、沖縄県大宜味村喜如嘉公民館のシンボルの「長寿ガジュマル」のお別れ会と祈願が10日夕、区民らが集まって開かれた。
区によると、区民による話し合いで伐採が決まっていたが、その報道を見た東京都内の会社がもらい手となることが決まった。
木の移植作業は週内にも始まり、いったん恩納村内に運ばれて剪定(せんてい)作業などが行われる。挿し木用に10数本取って区民の希望者に分け、木の思い出を大切に継いでいくという。
木は現在の公民館敷地にあった喜如嘉小学校の創立を記念し、1880年代に植樹されたと伝わり、樹齢は130年以上とみられている。お別れの祈願には、お年寄りらが多く集まり、木の前で泡盛をささげ、えぐれてしまった根の部分には「魂を抜く」として、線香などを供えた。
お年寄りらは木に向かって手を合わせ、口々に「ありがとう」と感謝を語った。メジロが多くいたこと、木に登って遊んだことなど、ガジュマルとの思い出話にも花が咲いた。
小学校が移転した後に、跡地には公民館が建てられた。公民館で子どもたちの世話をする「保母」(現在の保育士)として働いていた金城久子さん(85)は「いたずらをした子どもたちが、木の上に登って隠れていたことが昨日のように思い出される。大きな木、思い出のある木がなくなるのは寂しい」と語った。稲福隆区長は「伐採を決めていたが、みんなの思い出の詰まった木に、もらい手が出てくれて本当によかった」と話した。
(池田哲平)