太平洋戦争で約3400人の沖縄県人が犠牲になったパラオへの墓参ツアーの一行が28日午前、那覇空港を出発した。5年ぶりの現地訪問には0歳~87歳の29人が参加。遺族らが年々高齢化するなかでも、戦争で亡くした肉親への思いは尽きない。5泊6日の日程でコロール島の「沖縄の塔」などを訪れ、手を合わせて慰霊する。
日本は戦前、パラオのコロール島に南洋庁を置き、南洋群島統治の中心地として開発した。1937年にパラオに居住する日本人は1万1391人で、このうち4割余を県人が占めた。米軍は44年3月に空襲を開始し、民間人は空襲や飢餓などで命を落とした。
墓参団としての訪問は2018年11月を最後としたが、関係者から要望が上がり、「パラオ慰霊墓参の旅」として国際旅行社がツアーを企画した。
那覇空港での出発式で、「沖縄パラオ友の会」の田中順一会長(90)は「元気で行ってらっしゃい」と送り出した。
初めて参加する真栄田ナヱさん(82)=南城市=は、他界した夫の好信さんの代わりに手を合わせる。好信さんはパラオで父親と妹、弟を亡くし、墓参団が始まる前に亡くなったため、行くことはかなわなかった。ナヱさんは「長いこと待たせたかな」とつぶやいた。
最年少の0歳の長濱正悟ちゃんと母親・千弦さん(42)は北海道から参加する。千弦さんは15年前に他界した父親が3歳までパラオで過ごし、兄や姉を亡くした。「(父は)『生前パラオに連れて行きたい』と話していた。赤ちゃんがいるので参加するか迷ったが、父が命をつないでくれたから、自分がいて息子がいることを感じたい」と笑顔を見せた。
一行は台北を経由して29日にパラオに入る。12月2日にパラオをたって台北経由で3日に帰国する。(中村万里子)