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【識者】民間リスク拡大は必至 特定重要拠点の指定の本質 住民避難が困難になる恐れ 佐道明広氏(中京大教授)  


【識者】民間リスク拡大は必至 特定重要拠点の指定の本質 住民避難が困難になる恐れ 佐道明広氏(中京大教授)   中京大学・佐道明広教授
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 特定利用空港・港湾(特定重要拠点)の施設に関して、政府は「米軍の使用は想定していない」などと説明しているようだが、あり得ない。ガイドラインでも民間の港湾や空港も有事になれば供用するということになっている。自衛隊が使うところは当然米軍も使う前提で議論されているはずだ。

 アメリカの戦略にもあるが、(防衛力を)分散して配置するという傾向が強くなっている。使える部分が非常に拡大することは、防衛の面から見ればメリットになる。

 一方で、軍民共用という点で民間等に対するリスクが極めて拡大することは間違いない。実際に有事になった際だけではなく、平時でも訓練で頻繁に使われる可能性が高まる。

 今、国民保護・住民保護が非常に問題になっている。実際に、供用する空港は住民が避難するためにも使う空港だ。軍事と民間のどこに境目を設けることができるのか。特に、緊張が高まった段階では軍事優先になってしまう。空港や港湾が使えなくなり、住民の避難が非常に困難になるということもある。

 また、沖縄に候補地が集中している現状は沖縄がかなり軍事拠点化するということだ。通常、空港や港湾は民間の経済振興、観光などに活用されるものだが、軍民共用となれば、さらに訓練の度合いがかなり増える。観光で来た人たちが横で軍事演習をしている状況を見たときにどう思うだろうか。長い目で見ていくと、沖縄の経済にもかなりの影響を及ぼすことになるのではないか。

 この制度を、国は抑止力向上のためだと主張していくはずだ。現実としては、県民の多くが懸念するように軍事利用されることは当然攻撃の対象になる。また、施設周辺も攻撃の対象、あるいは攻撃されてしまうことも当然あり得る。そのような危機の際に民間人を急いで逃がす手段などを国がどの程度対応してくれるのかというところがまず第一に求められる議論だ。(防衛政策史)