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【深掘り】国は「軍事色」隠しに腐心 特定重要拠点 沖縄県は「予算要望せず」


【深掘り】国は「軍事色」隠しに腐心 特定重要拠点 沖縄県は「予算要望せず」 下地島空港(2007年撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 政府が安全保障上必要性が高い空港や港湾を「特定重要拠点」に指定する事業について、県は2024年度の予算要望を見送った。この間、国は自衛隊などによる施設の利用は「年に数回」「米軍の使用は想定していない」などと地元配慮を強調してきた。だが、防衛力の「南西シフト」に伴う県内の基地負担増加が指摘される中「整備は1回だけだが、自衛隊などの使用はずっと続くことになる」と制度への慎重な見方が横たわる。

 対象施設の候補地は全国に32カ所。うち県内は12カ所あり、全国の3分の1を占める。

 県は国に制度の詳細について照会。質問項目は明らかにされていないが、関係者によると「有事に攻撃対象にならないか」など、約30項目に上る。十分な回答が返ってきていないことが慎重論の一因となっている。

 県政や県議会与党内で渦巻くのが制度の目的への疑念だ。政府は「自衛隊・海上保安庁の艦船・航空機が平時から円滑に利用できるようにする」としているが、現状でも自衛隊や海保の船は民間利用に支障がない限り使用できている。

 唯一、自衛隊が利用できていないのが宮古島市の下地島空港だ。「屋良覚書」と「西銘確認書」で軍事目的で利用しないことが県と政府の間で確認されているためだ。

 一方、政府内では尖閣諸島への近さや3千メートルの滑走路を有するなどの特性から下地島空港を使いたいとの要望が従来から根強くあり「制度の主眼は下地島空港ではないか」(県政与党幹部)との懸念がくすぶる。

 制度の提案を受けて与那国町が「最大限、民事利用させてもらう」(糸数健一町長)との意向を示すなど、積極的な活用を求める動きもある。国も「民間利用がほとんど」だと説明するなど、制度の「軍事色」を薄めることに腐心する。

 これに対し、知事周辺は「民間のニーズがあるなら、軍事利用を想定せずとも従来のハード整備予算で手当てすべきだ。制度を受け入れなければ整備しないとなれば、脅しているのと同じだ」と警戒感を隠さない。

 県幹部は政府が想定外とする米軍使用について「日米地位協定がある以上、使う可能性は払拭できない」と指摘。「そもそも整備の需要がある施設もあり、全否定はできないが、(受け入れれば)県が軍事利用に協力しているように県民から見えかねない。安易に乗っかることはできず、丁寧な説明が必要だ」と話した。

(知念征尚、與那原采恵)