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体験格差生まない基盤構築を 多角的視点で論じ合う 離島の子どもの体験保障を考えるシンポ 沖縄


体験格差生まない基盤構築を 多角的視点で論じ合う 離島の子どもの体験保障を考えるシンポ 沖縄 沖縄・離島の子どもの体験保障を考えるシンポジウムで歌を披露する首里高の新里桃花さん(左から2人目)と奥間あかりさん(同3人目)=20日、那覇市の沖縄産業支援センター
この記事を書いた人 Avatar photo 小波津 智也

 「沖縄・離島の子どもの体験保障を考えるシンポジウム」(みらいファンド沖縄主催)が20日、那覇市の沖縄産業支援センターで開かれた。みらいファンド沖縄は2023年度に子どもの体験に関する調査や体験格差を補う配信などコンテンツ開発に取り組んだ。四つのセッションを通じ、体験が子どもの成長に重要であることを多角的な視点で論じ合い、格差を生まないための基盤をどのように構築するかを考えた。

配信でつなぐ

 初めのセッション「子どもたちの視点から」では、若杉福祉会が那覇市大名児童館などで子どもたちのやりたいことを応援する取り組みとして、音楽や配信技術の指導の様子を紹介。利用者の首里高2年の奥間あかりさん、新里桃花さんが演奏を披露した。

 奥間さんは児童館を利用する中でライブの企画運営や配信のノウハウを学び、台湾との文化交流や無観客のネット配信ライブ、小中高生によるバンドイベントを開催したことを報告。「配信で音楽をたくさんの人に届けられるようになった。イベントは仲間をつなぐ。活動を続けて沖縄を盛り上げたい」と話した。

離島も等しく

 「学校・コーディネーターの視点から」では、キャリア教育事業などを展開するワンスペースの比嘉敦子事業統括部長がコロナ禍による職場体験中止をきっかけに企画した、企業と学校を配信でつなぐ「オンラインジョブツアー」を説明した。

 一度に複数の学校を受け入れられ、本年度は受け入れ企業6社に対し延べ19校997人の児童生徒が参加した。離島の南城市立久高小でのツアーを振り返り「質問を呼びかけると消極的だったものの、他校の児童(の積極性)を見て手を上げる児童がいた」と話し、配信のメリットを上げた。

意欲のない子にも

 「地域・社会教育の視点から」に参加した那覇市立若狭公民館の宮城潤館長は、社会教育の場としてさまざまなプログラムを無料で体験できる機会を提供している。

 プログラムに参加する子に対し「自己肯定感や大人とのつながりも生まれ、地域に還元される取り組みになっている」と述べる一方、「意欲のある子に対する体験を保障することはもちろんだが、(貧困などを背景に)意欲を持ち得ていない子もたくさんいる」と指摘。若狭児童館や学校など公的機関とも連携して意欲のない子どもたちとのつながりを築くことで、体験機会を提供できる環境づくりに努めたいとの考えを示した。

チャンネル増やす

 最後のセッションではこれまでの議論を踏まえた意見が交わされた。

 琉球大地域共創研究科の本村真研究科長は、体験することに意欲のない子や親のニーズに合った寄り添いの支援の重要性を主張する。子どもの成長には生理的と心理的の二つのエネルギー補給が必要とし、貧困などでこれらが補給できなければ体験保障につながりにくくなると強調した。

 特にやる気を上げる心理的エネルギーの補給について「何がはまるかは人それぞれで、英語かもしれないしエイサー、野球かもしれない」と、保障するためのさまざまな準備が必要とし、補給するためのチャンネルを増やすことが、貧困の連鎖を絶つ上でも求められると持論を展開した。
 (小波津智也)