沖縄県名護市辺野古の新基地建設工事で、県による埋め立て承認の撤回を取り消した国土交通相の裁決が違法だとして、辺野古周辺に住む市民4人が国に裁決の取り消しを求めた抗告訴訟の控訴審判決で、福岡高裁那覇支部(三浦隆志裁判長)は15日、原告の訴えを認め、「原告適格がない」などとして原告の訴えを却下した那覇地裁の判決を破棄した。住民4人の原告適格を認めた上で、審理を一審那覇地裁に差し戻した。辺野古新基地建設工事を巡り、住民による一連の訴訟の判決で原告適格を認めるのは初めて。
三浦裁判長は判決理由で、原告側が訴えていた新基地建設に伴う騒音などの被害について「著しい被害を受けるおそれがある」と判示した。
2022年4月の那覇地裁(福渡裕貴裁判長)の一審判決は、原告が訴えた新基地建設に伴う騒音や水質汚濁などの公害や災害の被害について公有水面埋立法で保護される「法律上の利益」を有していないと判示し、原告適格を認めなかった。
軟弱地盤や活断層の問題が、国交相裁決が違法である理由になり得るとしたものの、「被害を直接的に受けない利益に関係のない違法」なものと指摘。原告の訴えは「いずれも不適法」とした。
原告側は、原告適格の認定の範囲を実質的に広げた、2004年の行政事件訴訟法(行訴法)の改正も踏まえ、一審判決の破棄を求めていた。
訴訟での焦点となっていた原告適格については、那覇地裁(平山馨裁判長)が20年3月、国交相裁決の執行停止を求めた原告の申し立てを却下した際には、原告15人のうち4人の原告適格を認める決定を出していた。
審理が継続したが、21年4月に裁判長が交代し、22年4月の判決では一転して原告適格を認めない判決が下された。