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「女性」の視点から見た沖縄の歴史とは 写真家・石川真生さんら特別講義 沖国大


「女性」の視点から見た沖縄の歴史とは 写真家・石川真生さんら特別講義 沖国大 石川真生さん(中央)に生徒からの質問を投げる杉本美泉さん(左)と植田恵子さん=5月16日、宜野湾市の沖縄国際大学
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 沖縄国際大学の芸術学(担当・浦本寛史教授)の講義で、写真家の石川真生さんと、NHKのドキュメンタリー番組「沖縄の夜を生きて~基地の街と女性たち~」の制作者である、ディレクターの植田恵子さんと杉本美泉さんを講師に招いた特別講義が5月16日、同大学で行われた。事前に番組を観賞していた生徒ら約120人は、3者の対話を通して番組制作の意図や、激動の戦後沖縄の実相について理解を深めたほか、「生きることの自由」について考えた。

 同番組は、米軍統治下における基地周辺の歓楽街で戦災や土地接収によって困窮した多くの女性たちが、バーやナイトクラブで米兵相手に働き、家族の生活を支えていた当時の様子や心境などの証言を記録した。

 番組制作の背景について、沖縄で生まれ育った杉本さんは「復帰50年の節目に、沖縄の歴史を女性の視点で見てみたいと思った」ことが原点にあると説明した。植田さんは「まぶしく輝いたりもしたけど、つらい思いをしながら生き抜いてきた人たちが沖縄に生きたんだということ、一人一人の生きている姿を番組を通して感じてもらいたかった」と述べた。

石川真生さんの講義に熱心に耳を傾ける生徒ら

 沖縄における米国の存在を写真に収めたいとの思いから、自らも1970年代に黒人兵相手のバーで働き、そこで働く女性たちとも親交を深め写真を撮った経験がある石川さんは、「家族のために自分が働くんだと決心し、がむしゃらに生きた女性たちを私は尊敬している」と強調する。当時の沖縄では、米兵相手に稼ぐ女性に対し、社会の冷たい視線が送られていたこともあっただろうとおもんばかり、「大変だったね、お疲れ様でしたと伝えたい」と述べた。

 また石川さんは「沖縄の写真を一点でも多く残すことが私の希望だから、死ぬまで撮り続ける」と断言。生徒たちに向けて「好きなことがあれば親が反対しようが何しようが押し通し、資金が必要ならば自分で働いて作りなさい。早く好きなことを見つけてスタートした方がいい」とエールを送った。

 受講した総合文化学部4年の與那嶺舞さんは「沖縄で生まれ育ったのに、初めて知ることばかりで驚いた。沖縄の悲しい歴史にもきちんと目を向け、自分に何ができるか考えたい」と述べた。同部の岩澤翔斗さんは「沖縄戦で生じたひずみは戦後もずっと地続きで、今も存在していると感じた。ディレクターの『ただただ史実を知ってほしい』という思いも伝わった」と話した。

 (当銘千絵)