地方自治問う試金石 辺野古の違法確認訴訟


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口頭弁論前の集会でガンバロー三唱する参加者ら=19日午後、那覇市の城岳公園

 沖縄県が国の是正の指示に従わなかったことが違法な「不作為」であったかどうかを巡り、19日に福岡高裁那覇支部で行われた翁長雄志知事の本人尋問では米軍普天間飛行場移設問題に関する県と国の実質的協議の有無について焦点が当てられた。協議を重ねてきたとする国と、本質的な議論はなかったとする県。両者の主張の隔たりは、結審に至りながらも、そもそも法廷で解決すべき問題であるのかという“入り口”にすらたどり着いていない現状を浮き彫りにする。

 翁長知事が尋問で協議の重要性を繰り返し強調したのも、アリバイ作りのような話し合いの場の設定を重ねることで、事態を進行させようとする国をけん制する意図がうかがえる。

 地方自治法改正により、国と地方自治体は対等な関係が目指されることとなった。その上で、普天間飛行場移設問題については全県選挙などで主要争点となり、その選挙結果は辺野古移設反対という県民の民意を示している。

 原発問題など地方自治体の民意と国益の衝突は全国にあり、今後、地方と国の対立が司法に持ち込まれる場面は増加するとみられる。不作為の違法確認訴訟は今回が制度創設以来初めてのケースだ。多見谷寿郎裁判長が、まだ煮詰まっているとは到底言えない議論をどう整理するのか。訴訟の判決は、司法が地方自治とどう向き合うかを問う試金石となる。(大嶺雅俊)