辺野古を巡る不作為の違法確認訴訟の判決が16日、福岡高裁那覇支部で言い渡される。代理署名訴訟時の知事である大田昌秀氏(91)と県側弁護団長を務めた中野清光氏(82)に判決の見通しなどを聞いた。
「日本司法は行政従属」元知事・大田昌秀氏
県側は敗訴するだろう。勝ったとしても国は上告する。最高裁での裁判は県にとってより不利になる。司法、立法、行政はいずれも独立してけん制し合うべきだが、日本の司法は行政に従属している。最高裁は過去に統治行為論を持ち出した経緯がある。日米安保条約が憲法より上位にあるという認識だろう。
地方自治法が1999年に改正され、国と地方自治体は対等になったが、実態としてはいまだ上下関係にある。代執行訴訟の和解後すぐに、国交相が新たな裁判を始めたことからも明らかだ。国地方係争処理委員会も判断を避けたが、地方自治法にのっとって結論を出すべきだった。
裁判所は県側の証人を却下している。最初から沖縄の声を聞こうという発想がない。代理署名訴訟の際も証人は却下された。当時は敗訴したが、勝とうが負けようが訴えるべきことは訴えねばならないとの考えだった。
今後は、県民は判決にかかわらず結束し、運動を盛り上げていくことしか解決の道はない。過去の「島ぐるみ闘争」から学ぶことは多い。同時に運動を全国に広げ、共有させるべきだ。
県は米連邦議会上院の軍事委員会など、海外の米軍基地について権限を持った人にもっと働き掛けていくべきだ。
「当然県が勝つべきだ」 代理署名訴訟弁護団長・中野清光氏
辺野古には米軍普天間飛行場の機能だけでなく、軍港までも造られる。加えて辺野古の海は深く、貴重な価値がある。この埋め立てが「合理的」なわけはなく、公有水面埋立法の要件を満たさないことは明らかだろう。そのことを県は理論的にも優れた形で取り消し理由に盛り込んでいる。
国の主張は辺野古埋め立てという結論を前提にして、その理由を後からくっつけている印象がある。安全保障を引き合いに出して反論しているが、国防のために何をしてもよいわけではなく、非常に抽象的だ。
代理署名訴訟当時においては、基地提供に反対する地主の代わりに首長や知事が代理署名しなければいけないとの手続きが地方自治法に定められていた。憲法論を展開したが、勝訴するのは至難の業で、最初から勝てるとは思っていなかった。
ただ今回は公有水面埋立法や地方自治法の解釈の問題だ。加えて地方自治法改正により国と地方自治体は対等な関係になっており、上下関係だった代理書面時とは違う。
度量の小さな裁判官が増えてきている。出世を考えると国に盾突くような判決を出すのはなかなか難しいと考える裁判官もいるだろう。ただ法律家の立場からすると、当然県が勝つべきだと思う。