沖縄市出身の映画監督、仲村颯悟(りゅうご)さん(21)=慶応大4年=は慰霊の日を「特別な日」と言う。米軍普天間飛行場の辺野古移設をテーマにした映画「人魚に会える日。」を制作するきっかけとなった日だ。23日、平和の礎を訪れた仲村さんは「東京に出てきた者として沖縄戦を伝える使命がある」と話す。
仲村さんが「あれっ」と思ったのは、3年前の6月23日だった。進学のため沖縄を離れ、初めて迎えた慰霊の日。「沖縄では学校も休みになって、平和を考える。でも、東京では慰霊の日自体、知られていなかった」。沖縄の声を伝える映画を作ろうと決め、「人魚に会える日。」が誕生した。
沖縄戦は、仲村さんにとっても遠い出来事ではない。父方、母方とも曽祖父が沖縄戦で亡くなっている。「今年は絶対に行く」と、慰霊の日に合わせて帰省し、平和の礎の前で手を合わせた。汗を流しながら平和行進に参加するお年寄りを見て、「自分ももっと沖縄戦を知らないといけない」と感じたという。
沖縄戦の体験者で、平和を追求し続けた元知事の大田昌秀さんが6月12日に亡くなった。その日、仲村さんはツイッターに書いた。「あの言葉をその思いを紡いでいかないといけない」
23日、「人魚に会える日。」のDVDが発売された。仲村さんは「少しでも慰霊の日に目が向くといい。日常の中で、毎日、沖縄戦を考えることはできない。でも、この日だけはきちんと考えないといけない。体験者に話を聞いて、いつか沖縄戦を(映画で)描きたい」と話している。