名護市辺野古での新基地建設が国指定の天然記念物ジュゴンに影響を与えるとして、日米の保護団体が米国防総省に工事の中止を求めた米ジュゴン訴訟で、米サンフランシスコ第9巡回控訴裁判所(連邦高裁)は21日(現地時間)、米裁判所には工事中止を命じる権限がないとして訴えを棄却した一審の判断を破棄し、同連邦地裁へ差し戻した。
「工事は政治的問題ではない」という原告側の主張を一部認めた判断で今後、新基地建設工事中止の是非を含め実質的な審理に入る。新基地建設に反対する市民からは「道が開けた」と歓迎の声が上がった。
日本環境法律家連盟(JELF)や生物多様性センターなどの原告団は2003年、米国の国家歴史保存法(NHPA)を根拠に国防総省はジュゴンを保護する義務があると主張し、新基地建設の差し止めを求める訴訟を起こした。
だが、地裁は工事は日米政府の合意に基づくもので、外交・政治問題を理由に工事中止を命じる「法的権限がない」として、原告側の訴えを棄却。原告側が15年4月に判決を不服とし、上訴していた。
今回の判決を受け、国防総省には工事がジュゴンに与える影響について県や地元住民、環境保護団体などの利害関係者と協議し、ジュゴンの実効性ある保存法を明示する必要性が出てくる。現時点で国防総省は判決への見解は示していない。
原告団は声明で「現在の基地建設計画ではジュゴンは生息できない」と主張し、高裁判断はジュゴンの「生命線」になると評価した。原告弁護団の1人である籠橋隆明弁護士は「米国の司法は行政に対しても平等で、厳しい目を持っていることが証明された」と評価した上で「工事差し止めへの道が開けた」と今後への期待を寄せた。また、米国側が最高裁に上告する可能性を指摘し「引き続き入念な策を練った上で、県民や米国民の支援と理解を得ながら基地建設の阻止を目指す」と断言した。
英文へ→US federal appeals court reinstates Okinawa dugong lawsuit, plaintiffs’ argument partly supported