大浦湾保護区を提言 識者、希少な生態系評価 沖縄県がシンポ


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 県は24日、辺野古新基地建設工事が進む名護市辺野古の大浦湾の自然環境の貴重性を発信する「辺野古・大浦湾シンポジウム」を浦添市の国立劇場おきなわで開催した。パネル討論で専門家らは、同海域を県条例で保護区に指定するなど、県主導による取り組み強化を提言した。シンポジウムでは(1)工事を即時中止し、生態系への影響調査の実施と評価(2)新基地計画の断念-を日米両政府に求める声明を採択した。

辺野古・大浦湾シンポで大浦湾の生物多様性や基地建設による影響について意見を交わす専門家ら=24日、浦添市の国立劇場おきなわ

 大浦湾の保護の必要性に多くの人が理解を深め、新基地建設工事中止につなげるのが狙い。翁長雄志知事はあいさつで「工事が中止され、米軍提供水域が返還されたら、大浦湾の自然公園指定を視野に取り組んでいきたい」と述べた。

 海洋生態学専門家で国際自然保護連合(IUCN)の世界海洋極地プログラム副部長も務めるフランソワ・シマール氏は基調講演で、大浦湾のサンゴについて「世界中で多くの海を見てきたが、こんなに健全に保全されたサンゴを見られる場所はまれだ」と高く評価した。埋め立て工事による影響については「深い所に海流があった。海流を改変しないように考えないと、湾の奥にあるマングローブにも大きな影響を与える可能性がある」と指摘した。シマール氏は、建設計画を断念した事例として西フランスの空港計画を挙げた。

 ジュゴンネットワーク沖縄の細川太郎氏はジュゴンの自然増加率は成体20頭がいて1年1頭であり、人工飼育下での繁殖成功例がゼロであることから、ジュゴン保護には藻場など生息地の保護が最重要だと訴えた。日本自然保護協会の安部真理子氏は県条例による保護区指定を提案した。

 吉田正人筑波大学大学院教授、藤田喜久県立芸大准教授、中井達郎国士舘大学講師が登壇した。

 定員200人の会場に、250人超が来場し、関心の高さをうかがわせた。