翁長知事支える「オール沖縄」、秋の知事選向け正念場 かりゆし脱会 経済界相次ぐ離脱


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當山智士氏

 翁長雄志知事を支援する企業の代表格であるかりゆしグループが3日、「オール沖縄会議」からの脱会を表明した。3月に共同代表を辞任した金秀グループの呉屋守将会長と同様に、県民投票の実施に否定的な事務局への反発を背景にした離脱だが、政党の一部や労組内では慎重論が根強い。知事の最大公約である「辺野古阻止」の手法を巡る対立を機に、革新政党色が強まる組織運営に対する不満も噴出した格好だ。一方、金秀、かりゆしは共に翁長知事の2期目を視野に、新たな態勢の構築を模索するが、翁長陣営内で生じた不協和音が収まる気配はなく、オール沖縄は正念場を迎えている。

◆与党、三者三様

 3月中旬、民意の再結集の手段として県民投票を掲げるかりゆしは、オール沖縄会議事務局に質問状を提出し、30日までの回答を求めたが、事務局からのゼロ回答に、同社幹部は不満を募らせた。4月3日、会見で當山智士社長は「私たちの思いが通じず、オール沖縄の中にいる意味を見いだしきれなかった」と語り、悔しさをにじませた。

 一方、県民投票を巡っては、県議会与党3会派内でも意見は割れている。秋の知事選をにらみ、3月中には結論を出すことで一致していたが、「交通整理ができていない」とする社民・社大・結と、「知事発議の県民投票が最も有効な手段」と積極姿勢の会派おきなわ、「より県民が分断される」と消極姿勢の共産と、三者三様で、結論が出せる状況に至っていない。

◆原点回帰

 県民投票を契機に「オール沖縄」態勢にほころびが生じる中、「中道・保守の組織をつくって両輪で走ればいい。原点に戻ればいいだけだ」(与党県議)と見る向きもある。3月26日、与党幹部と翁長知事との会合が行われた。出席者によると、知事は「厳しい選挙戦を乗り越え、政府に勝つには、県民が一つにならないといけない」と、熱弁を振るったという。見据えるのは、前回知事選で翁長氏の支持母体となった「ひやみかち・うまんちゅの会」の再現だ。

 4年前、保守系の「ひやみかちの会」と、革新系の「うまんちゅの会」がそれぞれ発足し、新里米吉県議が議長を務める調整会議が橋渡し役となり、保革が協力し、知事選を勝利に導いた。月内にも今秋の知事選に向け、新たに調整会議が発足する予定だが、最近の与党内では「中道、保守側の意見が小さくなった」(与党県議)と、選挙から3年余がたち、与党内の一部には不満が蓄積されている。

 2月の名護市長選や3月の石垣市長選など県内首長選で負けが続くオール沖縄陣営。相次ぐ、保守層の離反に、新たな組織態勢の構築に向けた動きが出るなど知事選に向け、さまざまな思惑が交錯する。翁長知事の態度が、オール沖縄の行方の鍵を握る。(吉田健一)