教育
沖縄から育む市民力

<沖縄から育む市民力>3 琉球新報×キリ学大 翔南小の授業実践

◆「参加する」ってどういうこと?

 「社会参加」というけれど「参加」ってどういうことだろう。琉球新報と沖縄キリスト教学院大学の共同企画「沖縄から育む市民力」の今回は、ワークショップ「参加のはしご」を通して自分たちが望む「参加」の形を考えた南風原町の翔南小学校の授業実践を紹介する。

◆関わり方は6段階/経験当てはめ意見出し合う


「参加のはしご」で自分たちの活動を考える5年1組の生徒たち=5月、南風原町の翔南小学校

 「自分の頭で考え、自分の言葉で話せたら今日は100点。正解・不正解ではなく話し合うことが大事です」。5年1組の2時間続きの特別活動「参加のはしご」は、屋良真弓教諭のそんな言葉で始まった。

 一言で「参加」と言ってもどれだけ主体的に関わるかには段階がある。このワークショップは、米国の発達心理学者ロジャー・ハート氏が示した理論を基に、自分たちの経験に当てはめて考える内容だ。

 「これまで何かに参加したことはある?」。屋良教諭の問い掛けに、子どもたちからは「お楽しみ会」「学童のキャンプ」「ピアノの発表会」「綱引き」と地域や学校でのさまざまな活動が飛び出した。

 「『参加』にはいろんな段階があります」。屋良教諭は、子どもの主体的な関わりの程度で6分類した「参加の段階」を順に説明した。「リーダーは子どもで大人は子どもに協力する『巻き込み参加』が一番主体的に関わっている。逆に、大人が子どもを利用する『あやつり参加』や、子どもは形だけの参加で意見も聞いてもらえない『形式的参加』は参加したことになりません」

 「参加しない“参加”があるの」と目を丸くする子どもたち。六つの事例を印刷したカードが6段階のどこに当たるかをグループで話し合ってイメージをつかむと、いよいよ自分たちの経験の“点検”だ。

 「おばあちゃんちでのバーべーキューはおいしかったけど、意見を言う場面はなかった」「役割を割り振られたマラソン大会は『役割参加』かな」「子どもが鬼ごっこをしたいと言って大人がOKしたのはどの段階?」。グループでわいわい話し合って経験をふ分けし、最後にはグループごとに発表した。“物差し”を持って整理することで「学芸会や運動会は学校のアピールに利用されている感じがするから『あやつり参加』かな」と疑問も飛び出した。

 「学校では日程や学ぶ内容など大人が決めることもあるけど、みんなの願いや希望を聞いて任せたいこともたくさんある。『参加のはしご』を思い出して、自分たちはどんな参加をしたいか考えて」。段階に分けて参加の意味を考えるという新しい“ものの見方”を手渡した屋良教諭は、日常生活で活用するよう呼び掛けて授業を終えた。

 子どもたちからは「『あやつり参加』『形式的参加』は参加したことにならないことに驚いた」(宮城理心さん)、「これまでに参加した行事を思い出した」(金城咲彩さん)、「学芸会は子どもに強制的にやらせるものだと思った」(宮城季宗さん)と自らの経験を見直す声が次々と出た。「今までは『役割参加』が多かった。これからは『子どもがリーダー』『共同決定』をしたい」(中村和さん)、「今後はどういう参加か考えながらみんなで楽しく参加したい」(神里新翔さん)と先を見る目も芽生えた。

 授業のポイントは「子どもを信頼し、議論を委ねること」と屋良教諭。多くの発言が飛び交った時間は「自分の意見が言えたり、自分と違う意見が聞けたりして楽しかった」(大城ゆ月さん)との声もあり授業自体が参加の場となった。

◆5年1組担任 屋良真弓教諭/安心して発言できる学級に


 子どもたちは主体的に活動すると「充実している」「楽しかった」と感じる。この感覚を「参加の段階」で整理して認識してもらうことが一番の狙いだ。自分の行動の意味を理解することで、今後どんな活動に、どのように参加するかを選べるようになり、これからの学級生活や学校行事に生かせるようにしたい。

 大切なのは意見を言い、聞くことだが、この学校の子どもたちも全国と同様に「集団の中で自分は認められていない」と感じる傾向がある。できるだけ子どもの意見を聞き、子どもが安心して発言し「認めてもらえた」と感じられるような学級経営を心掛けている。

 子どもたちには一人一人が社会に主体的に向き合い、考え、行動できる人に育ってほしい。学級や学校など身近な生活の場での経験の積み重ねが、地域や社会への参加の一歩になる。小学校段階でできる「市民力」の素地を作っていきたい。このプログラムは誰でも気軽にできる内容なので、ぜひ多くの先生に実践してほしい。

◇子どもの変容

離島体験実行委員 立候補多数で激戦

 翔南小は27~29日、伊是名村での「離島体験」を行った。今回の授業を受けた5年1組では24人中12人が実行委員に立候補する“激戦”に。これまでの様子とは対照的だといい「自分ごととして参加する気持ちや態度が育ちつつある」(屋良真弓教諭)。

◇参加の段階

(1)『あやつり参加』
 大人が子どもを利用する。

(2)『形式的参加』
 子どもは形だけの参加で、意見は聞いてもらえない。

(3)『役割参加』
 大人が計画して子どもに役割を与える。

(4)『共同決定』
 子どもと大人が一緒に決める。

(5)『子どもがリーダー』
 子どもが決定して最後までやりきる。

(6)『大人を巻き込む』
 子どもがリーダーとなり、大人と一緒に活動する。



ワークシート

 


①ワークショップ流れ表(授業案)


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②ワークシート1(「参加のはしご」説明)


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③ワークシート2(参加の種類カード)


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④ワークシート3(貼り付け用紙)


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⑤感想用紙(表)


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⑥感想用紙(裏)


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