米ジュゴン訴訟 きょう公開審理 工事影響の考慮争点 沖縄県や地元との協議有無も


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 日米の環境保護団体が名護市辺野古の新基地建設は米国家歴史保存法(NHPA)に違反しているなどとして、米国防総省に工事差し止めを求めた米ジュゴン訴訟差し戻し審は、現地時間の28日午後1時半(日本時間29日早朝)から、公開審理が開かれる。訴訟で原告側はジュゴンへの影響を「考慮する」手続きを実行していないなどとして違法性を主張。米国防総省側はNHPAを順守し工事は適法と反論してきた。

 争点は「考慮」の順守の有無や程度だ。その中でも原告側は国防総省が沖縄県や関係自治体との協議のほか、専門家への具体的な聞き取りをしていないと指摘する。

 米国防総省側はコンサルタントを通して県関係者と協議したとし、日本政府も重要な協議の対象者として「考慮」の順守を強調した。ただ、取材に県教育委員会や名護市博物館の関係者らは米側との協議を否定した。建設に反対する翁長雄志知事は県が訴訟の利害関係者であると表明しており、この点も地裁がどう判断するか注目される。

 一方、差し戻し審では2017年12月に米側が提出した「行政記録」で、米国の専門家が日本の環境影響評価の適正を否定する報告書が存在することが明らかになった。その上で米側は「科学的検証の一つ。ほかの調査結果も考慮している」とし、ジュゴンに工事は「影響ない」とした判断の正当性を主張する。

 それに対し、原告側は米国防総省の結論は根拠がないとし「悪影響だけでなく絶滅に追い込む可能性さえある」と工事差し止めの必要性を主張。米側の権限として、工事に伴う名護市辺野古のキャンプ・シュワブ内への工事業者の立ち入りを禁止するよう求めている。