「対話」演出も平行線 沖縄県・政府 集中協議終了 県、民意を背に持久戦 迫る土砂投入に対抗模索


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会談前に握手する玉城デニー知事(左)と安倍首相。米軍普天間飛行場の移設に関する主張は物別れに終わった=28日午後、首相官邸

 玉城デニー知事は就任後2度目となった安倍晋三首相との会談で、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画を断念するよう改めて訴えたものの、県と国との約1カ月の集中協議は平行線のまま終結した。首相自らの登場で、「対話」を求める玉城新知事に配慮するポーズを演出した一方、政府は年内に辺野古沿岸域への土砂投入を強行する方針だ。土砂投入を止める手だてが見いだせず厳しい局面に差し掛かる玉城知事だが、2月24日の実施が決まった県民投票をはじめ民意を背景としながら政府との持久戦を覚悟する。

 「言うべきことは言った。県としての方向性は見せられたのではないか」。安倍首相との面談を終えた玉城知事は、1カ月の期間を終えた集中協議の意義を記者団に強調した。県は29日に、埋め立て承認撤回の執行停止を不服として国地方係争処理委員会への審査を申し立てる見込みで、法廷闘争を見据えた法的な手続きが再び動きだす。

■再会談

 安倍首相は10月12日に玉城知事との初会談に応じたが、政府はこの直後の同16日に、県の埋め立て承認撤回の効力を止めるため行政不服審査法に基づく執行停止の申し立てへと踏み切った。玉城知事は「わずか5日後に対抗措置を講じた国の姿勢は、県知事選挙で示された民意を踏みにじるものだ」と憤りを見せた。

 それ以来となった安倍首相と玉城知事とのトップ会談。係争委への申し立て期限である1カ月で設定した集中協議の最後に当たり、玉城知事は「総理が会談したいということで官邸の側から(提案が)あり、であれば私がぜひ話をさせてほしいと受けることになった」と会談に至った経緯を説明した。

 安倍首相は、今臨時国会の最重要案件に位置付けた入管難民法を前日27日に衆院本会議で通過させ、(8)20出席の外遊日程も控えた合間を縫って知事との会談を設定した。とはいえ、首相と知事が双方の立場を確認するだけの形式的なやりとりに終わった。官邸と県の引き続きの対話について言及したものの「折を見て」という抽象的な表現となり、県幹部の一人は「沖縄に歩み寄ったという形を見せたつもりではないか」と冷静に受け止める。

■国の余裕

 国と県の計4回の集中協議は非公開で行われてきたが、謝花喜一郎副知事は(1)新基地の必要性(2)普天間飛行場の移設による「早期の危険性除去」への疑問(3)建設費が増加する可能性(4)軟弱地盤の存在―などの論拠で県の考え方を伝えてきたことを説明していた。

 玉城知事は協議の中身について、辺野古新基地の運用ができるまで最低でも13年を要するという工期の想定や、2兆5500億円に大きく膨らむという工費の試算など、県として具体的な数字も示しながら計画の見直しを迫っていたことを明らかにした。

 県幹部は「軟弱地盤にかかる予算や工期、新たな知事の許認可権限も出てくる。4年間の任期が玉城県政で状況がどう変化するか分からない。平行線でも、とにかく対話をつなげておくことが重要だ。そして県民投票もある」と強調する。

 政府側が年内の土砂投入を急ぐ背景の一つに、県民投票の前に埋め立ての既成事実を作りたいことがある。菅義偉官房長官に近い国会議員は「官邸の手のひらで踊っている」と県政の対応を冷やかした。協議中も辺野古での作業は続き、いったん工事を止めて協議が行われた翁長県政時代との違いが際立った。「本来ならもっと激しく対立する場面だ。話し合いを続けても、次は県が司法手続きに訴えることは目に見えている。想定内のことをしても準備は整っている」と指摘した。

 菅氏は28日午後の記者会見で、集中協議の成果について「政府と県がさまざまな形で意見交換を行っていくことでも一致をして、そういう意味では良かったのではないか」と余裕を見せた一方、県民投票が埋め立て工事に与える影響を問われると「全くない」と一蹴してみせた。 (与那嶺松一郎、知念征尚)