米軍普天間飛行場の沖縄県名護市辺野古移設を巡り、玉城デニー知事は29日、県の埋め立て承認撤回の効力を一時停止させた国土交通相の決定を不服として、総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」(係争委)へ審査を申し出る文書を送付した。審査申出書で県は執行停止決定を取り消すよう国交相への勧告を係争委に求めた。係争委は90日以内に判断を示す。県庁で会見した玉城知事は、12月中旬に辺野古に土砂投入する政府の方針に対し「対話でいい結果に導いていけると思っていたが、非常に残念だ」と反発した。
会見に同席した謝花喜一郎副知事は、県土の乱開発防止を目的とした「県土保全条例」を改正して国工事も対象に含めることなどを検討していくことを、28日の集中協議で杉田和博官房副長官に伝えたことを明かした。新基地建設工事への対抗策について謝花氏は「他の都道府県の環境に関する条例なども研究し、既存の知事権限以外についても検討していく必要がある」と強調した。
県は係争委への審査申出書で(1)沖縄防衛局は行政不服審査制度で執行停止を申し立てることはできない(2)国交相は内閣の一員であり、防衛局の申し立てに対して判断できる立場でない―を挙げ、国交相の執行停止決定は審査庁としての立場を著しく乱用した違法なものだと主張している。執行停止決定の取り消しで撤回の効力を復活させ、海上工事を再び止める考え。
会見で玉城知事は「国との対話を継続することで解決を図る考えだが、そのためには違法な執行停止決定は取り消される必要がある」と訴えた。係争委に対し「中立・公正な審査をお願いしたい」と語り、機会があれば自ら委員会で意見を述べたい考えを示した。
申出書は79ページで、ドッジファイル1冊分の証拠書類が添付される。30日に国地方係争処理事務局に到達する見通しだ。係争委が県の主張を認めなかった場合、防衛局は工事を続け、県は地方自治法に基づいて高裁に提訴するとみられる。
一方、菅義偉官房長官は29日午後の会見で「(28日の)総理と知事の面会の結果を踏まえ、県において判断したのだろう。今後、委員会での審議が行われるものであり、コメントは差し控える」と述べた。その上で「移設に向けた工事をしっかり進めていきたい」と語り、審査中も工事を続ける考えを改めて示した。