沖縄県、最初から「だました」 普天間運用停止 期限3ヵ月 政府、移設前提の約束「実現困難」


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昨年12月に米軍機から窓が落下した普天間第二小の敷地を沿うように飛行するCH53E大型ヘリ。機体は事故機と同型=6月、宜野湾市新城の同小

 政府が沖縄県に約束した米軍普天間飛行場の「5年以内の運用停止」を巡り、期限となる2019年2月まで残り3カ月を切った。飛行場は依然として宜野湾市の中央に居座り、ヘリコプターや垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが飛び交う。この5年で所属機の事故も頻発しており、周辺住民の危機感は高まっている。その中で運用停止期限を超える形で飛行場施設を補修する工事の予算を組む政府の責任が問われる。政府は普天間固定化か辺野古移設かの二者択一で、辺野古移設の受け入れを迫っているように映る。「辺野古が唯一の解決策」とする国の前提を県が崩せるかも焦点だ。

 飛行場を抱える宜野湾市では被害が軽減されるどころか、悪化の一途をたどっている。昨年12月には緑ヶ丘保育園と普天間第二小で相次いで米軍機の部品が落下した。近年市内で測定される騒音の発生回数は減少傾向にあるが、午後10時以降の夜間騒音は増えている。

高まる危機感

 市に寄せられる苦情件数は昨年度まで4年連続で過去最多を更新した。本年度は11月29日時点で462件で昨年度の432件を既に上回っている。

 宜野湾市議会では、12月定例会で5年以内の運用停止を求める請願が提出される見通しだが、内容次第では与党市議が決議に賛成するかは不透明な状況だ。ただ与党市議からも「(19年2月の)期限を前に最後の定例会となる。何らかの形で意思表示をしないといけない」との声もあり、請願を全会一致で可決できない場合は、与野党が歩み寄れる内容の意見書が模索される見込みだ。

 基地負担軽減を狙う動きもある。上地安之議長をはじめ与党市議5人は11月、同じく米軍基地を抱える山口県岩国市を訪れ、現地の市議と面談した。16年に全国16市町村議会議長が世話人となり、普天間飛行場の訓練分散などを目指す有志の会を軸に、負担軽減を目指すことを確認した。

 上地議長は「運用停止がされない場合でも、負担軽減は継続する必要がある。県外の議員とも連携し、具体的に進めていきたい」と語った。

問われる本気度

 運用停止の期限を巡っては、県と政府の認識が統一されていない。県辺野古新基地建設問題対策課は期限を「14年2月から5年をめどとする」とした政府答弁書を念頭に「19年2月末」が期限となるとの考えだ。一方、沖縄防衛局は本紙の取材に対し、期限について「厳密な定義が合意されていない」とした上で「14年2月18日を起点とした場合、5年の終点は19年2月18日になる」と回答した。

 県は仲井真県政時から、辺野古移設とは切り離して5年以内の運用停止を実現するよう求めてきた。だが、政府は16年2月以降は実現性について「難しい状況」(安倍晋三首相)などと説明。運用停止は辺野古移設が前提となるとの見方を示し、移設に反対する県政に責任を負わせる形で約束を困難視するようになった。現在では期限内の運用停止に取り組む姿勢は見られない。

 首相は今年11月2日の衆院予算委員会で、5年以内の運用停止に関する取り組み状況を問われ、普天間飛行場のKC130空中給油機の岩国基地(山口県)移転や、緊急時の受け入れ先となる築城基地(福岡県)の施設整備などを挙げた。だが、これらは日米が合意した普天間返還の条件となる内容で、5年以内の運用停止に直接関係するものではない。

 質問した赤嶺政賢氏(共産)が答弁内容について「前から決まっていた話だ」とただすと、首相は「仲井真(弘多)元知事と認識を共有した当時と、残念ながら大きく変化している。このような中で、5年以内の運用停止を実現することは難しい状況になっている」と述べた。

 運用停止の実現性については、政府内にも「当初から何を想定して約束していたのか分からない。実現可能な内容だったのか」(関係者)との疑問がある。県関係者は「結局初めからだましたということではないのか。米側とまともに交渉したのか。こういう姿勢が新基地建設を巡る問題の原点だ」と批判し、残り3カ月で「厳しいと言われても求めていく」と語った。
 (明真南斗、長嶺真輝)