政治

辺野古、再び法廷へ 沖縄県と政府、新局面 係争委が県の請求却下

国地方係争処理委員会の4回目の会合を始める委員ら=18日、東京都の総務省

 辺野古沿岸部の埋め立て承認「撤回」の効力を停止させた石井啓一国土交通相による執行停止を巡り、国地方係争処理委員会は沖縄県の審査請求を却下し、県が訴えた執行停止の違法性については適否の判断を回避した。国は執行停止によって再開させた埋め立て工事を続行し、県は係争委の決定を不服として国を提訴する方向で検討する。国と県が再び法廷闘争に突入する公算が大きい中で、24日に示される県民投票の結果によっては政治情勢に影響が出ることも予想され、辺野古新基地建設問題は新たな局面を迎える。

 政府は辺野古の埋め立て工事を続行させる一方、県は法廷闘争に向けた準備を加速させる。国地方係争処理委員会の結論は、埋め立て賛否を問う24日投開票の県民投票で有権者が1票を投じる判断材料にもなりそうだ。

 辺野古を巡っては、2015年にも翁長雄志知事(当時)による埋め立て承認取り消しの効力を国交相が停止し、県が係争委に審査を申し出た経緯がある。係争委は当時、多数決で「却下」とした。だが今回は5人の委員全員が「却下」で一致したといい、委員長の富越和厚元東京高裁長官は国交相の執行停止に「全く疑問は生じないという見解を取っている」と強調した。

■想定内

 総務省で係争委の記者会見が終わった18日午後5時50分ごろ、県の幹部と担当者は知事室に集まり、緊急会議を開いた。会見に先立ち係争委から「却下」との結論は知らされていた。会議を終えて出てきた幹部たちの表情は落ち着いていた。

 もともと石井啓一国土交通相が県の埋め立て承認撤回の効力を止めた際、県が取り得る対抗策は2パターンあった。一つが行政事件訴訟法に基づく抗告訴訟だが、この場合、県として提訴することになるため、県議会の承認が必要な上に地裁から始めなければならず、結論が出るまでに時間がかかる。

 そこで知事名で申し出ることができ、高裁に直行できる地方自治法に基づく「係争委ルート」(県関係者)を選んだ経緯がある。県は係争委に審査を申し出た時点で、高裁への提訴を見据えていた。今回の却下はまさに「想定内」(富川盛武副知事)だった。

 県議会与野党でも「予想通りの結果」との見方が大勢を占める。県政与党幹部は「係争委はそもそも第三者委員会の体をなしておらず、最初から期待していなかった」(瑞慶覧功県議)と批判した。野党の自民県連幹部は埋め立て承認取り消しの際の最高裁判決を挙げ「国の埋め立て工事の正当性は既に認められているはずだ」とけん制する。

■民意と司法

 県の訴えが“門前払い”されたことで、政府は引き続き工事を続行させる構えだ。「却下は想定通りで驚きはない。県は提訴するしかないだろう」。係争委の結論を受け、防衛省関係者は淡々と語った。対する県は提訴の方向だ。県内では一刻も早い工事中止を望む声が根強い。県幹部の一人は「(提訴)しない訳にはいかない」と語った。

 15年の埋め立て承認取り消しの際の執行停止を巡っては、係争委の却下を受けて県は行政事件訴訟法や地方自治法に基づき、提訴に踏み切った。政府側が提起した代執行訴訟と合わせ、辺野古を巡って3本の訴訟が並行する法廷闘争に発展した。16年3月になって双方が和解したため3訴訟は取り下げられたが、その後再び埋め立て承認取り消しを巡って政府が県を提訴し、同年12月に最高裁判決で県が敗訴した。

 今回も県と政府の対立は法廷闘争にもつれ込む見通しだが、和解のような展開となる可能性は極めて低い。政府筋は「県民投票で反対の民意が示されたとしても、裁判に影響するとは考えにくい」と先を見据えた。

 県は、知事名で発表したコメントで「今回の委員会の決定は県の承認撤回自体の適法性について判断が示されたものではない」と強調することを忘れなかった。県民投票を経て法廷闘争を迎える中、今回の係争委の却下が拡大解釈されることを警戒し、予防線を張った形だ。県としては県民投票で反対多数の民意を改めて政府に突き付け、新基地断念を迫りたい考えだ。

 謝花喜一郎副知事は、今回の係争委の決定が県民投票に与える影響について「全くない」と語った。

 (當山幸都、明真南斗、吉田健一)

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<用語>国地方係争処理委員会

 国と自治体の関係を「上下・主従」から「対等・協力」に転換した1999年の地方自治法改正に伴い、2000年に設置された。自治体は、行政運営への介入を意味する「国の関与」に不服があれば、審査の申し出が可能。係争委は90日以内に審査を終え、関与が違法・不当だと判断すれば、関係省庁に対応を改めるよう勧告する。委員は有識者5人で、総務相が任命する。



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