【読谷】「どうか、おばさんを責めないでください」。チビチリガマの慰霊祭に参加した60代の女性=沖縄市=は、沖縄戦当時、肉親らを苦しんで死なせないためにと、毒薬注射を打った看護師(享年26)の姪にあたる。慰霊祭後、遺族らに何度も頭を下げた女性。「米軍に捕まったら惨殺される」という戦時中の誤った情報や教育によって、注射器を握らざるを得なかった伯母の無念に思いを巡らせた。
女性は幼い頃から、父と共に毎年4月2日にチビチリガマを訪れ、伯母や犠牲者の冥福を祈り続けてきた。看護師だった伯母が「何十人もの村民を毒薬注射で殺害した」「軍から脱走してチビチリガマへ身を潜めた」など、事実と異なる記事を目にすることもあり、心を痛めてきた。
女性は「もし、私がおばさんの立場だったら、同じ事をしたかもしれない」と考えることがある。「間違った情報や教育が多くの命を奪ってしまった」と語り、二度と戦争が起こらないよう後世に正しい史実を伝える大切さをかみしめた。
(当銘千絵)