係争委への申し出、県の狙いは? 対話求める知事のメッセージ 法廷闘争も視野


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<解説>
 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡って沖縄県による埋め立て承認撤回を取り消した政府の決定に対し、県が総務省の第三者機関・国地方係争処理委員会に審査を申し出たことは、話し合いで問題解決を政府に求める玉城デニー知事の「メッセージ」ともいえる。一方、知事は最終的には法廷闘争を見据えており、手続きとしての意味合いも強い。

 撤回の取り消し裁決に対し、県が取り得る対抗策は二つあった。今回の係争委への審査申し出と、別の法律に基づく裁決の取り消し訴訟だ。県としては対話による解決を求める一方、昨年12月から土砂投入を続ける政府に対して早急な措置を迫られてきた。対話と対抗を両立させることを狙い、今回の審査申し出を選んだ。

 玉城県政にとっては、すぐに法廷闘争に移らず係争委へ審査を申し出ることで対話路線を印象付けることにもなる。玉城知事は22日の記者会見で「対話を重ねることと審査を求めることは矛盾しない」と強調した。

 係争委は2月、撤回の効力停止決定について審査を求めた県の訴えを却下した。今回の審査申し出も同じ構図で「門前払い」される可能性が高い。それは県も想定しているが、審査申し出に踏み切った。このまま政府が対話に応じなければ、係争委の判断後、地方裁判所ではなく高等裁判所に提訴することが可能なため、早期に法廷闘争へ切り替えることも念頭にあるとみられる。
 (明真南斗)