住民投票が盛んなスイスのジャーナリストで世界の住民投票を研究し、実践してきた「現代直接民主主義に関する世界フォーラム」の共同代表、ブルーノ・カウフマン氏が22日、本紙のインタビュー取材に応じた。カウフマン氏は、県民投票で投票者の約7割が反対したにもかかわらず日本政府が辺野古新基地建設を進めていることについて「非民主的な振る舞いだ」と批判し、沖縄の人々や県が民主主義を掲げて国際社会の関心を高めるよう働き掛けることが重要との考えを示した。
―県民投票や選挙の結果にかかわらず、政府は辺野古で工事を進めている状況をどう見るか。
「私が思うに、沖縄の人々が新基地を建設してほしくないという決断を日本政府が尊重しないのは本当に非民主的な振る舞いだ。沖縄の人々の明確なメッセージを押しつぶしているのは大きな問題だ」
「政府の振る舞いは、歴史的に植民地支配の継続ではあるが、第2次世界大戦の終結や、全ての人間が生まれながらに基本的人権を持っていると宣言した『世界人権宣言』から70年余りがたった今、民主的に選ばれた政府がそのような振る舞いをできるわけがない」
―辺野古の問題が民主主義の問題だという認識は全国であまり浸透していない。
「もっと多くの人々が辺野古が民主主義の問題だと認識するべきだ。福島など原発を巡る問題のように日本には沖縄と同じような問題がある」
「民主制度の中の非民主的な要素というのは、民主主義のブラックホールの中にどんどん吸い込まれていってしまう。だからこそ、人々による、もっと活発な運動や民主主義を促す沖縄県のような取り組みが必要だ」
―辺野古問題の解決に向け民主主義を国際社会に訴えることは有効だと思うか。
「そう思う。例えばスイス公共放送は多言語で放送しており、多くの人たちが辺野古の問題を知り、それぞれのやり方でサポートする。国際的に関心を持ってもらうことが常に重要だ」
「なぜなら民主主義というのは、地域や国内の課題ではなく、世界的な課題だからだ。民主主義の価値は個々人にも尊重され、コミュニティーの尊厳の問題でもある」
―辺野古問題は解決できるか。
「すぐにはできない。国際社会の関心を集めるためには一歩一歩、沖縄の人々や沖縄の政治が抵抗を続け、世界の民主主義を求める運動とつながることが大切だ。諦めないことだ」
「7月の参院選や安倍政権による改憲を問う国民投票などの機会にも民主主義について、もっと大きな議論になっていけばよいだろう」
(聞き手 中村万里子)