米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設に伴う名護市辺野古(同県)の新基地建設に向け、政府が辺野古沿岸部への土砂投入を始めて14日で半年が経過した。埋め立て反対が7割を超えた2月の県民投票結果に反し、政府は土砂投入を強行している。今辺野古の埋め立てはどのくらい進んでいるのか、どのように進めているのか。問題点は。工事の進展具合や実態を紹介する。(明真南斗)
■政府の計画「順調」?
防衛省は2018年12月14日に辺野古沿岸部への土砂投入を始めた。
防衛省によると、昨年12月に先行して埋め立てが始まった区域は面積で全体の約4%だが、この区域の埋め立てに必要な土砂量の約6割しか投入できていない。3月に着手した区域の面積は全体の約21%だが埋め立ては「少量」にとどまる。目視で見ても1割に満たない。
防衛省は2013年に県へ提出し14年に変更した埋め立て承認願書で、現在着工している辺野古側の埋め立ては両区域でおよそ半年だと示していた。計画通りに事を運べなかったのは埋め立て土砂を陸揚げする場所がK9と呼ばれる護岸のみだったためだ。作業を加速させたい防衛局は11日、新たに造成したK8と呼ばれる護岸にも船を着けられるように構造を変えて土砂の陸揚げ作業に使い始めた。
■約束違反
防衛省は2013年に埋め立て承認願書を県に提出し、承認を得た。願書に記載した内容に基づいて工事を進める約束だ。政府が工事を加速させるために踏み切った護岸からの陸揚げ作業が約束違反に当たるかどうかが問題となっている。
岩屋毅防衛相は7日、記者会見で土砂の陸揚げ場所について「具体的に限定されていない」と説明し、護岸を陸揚げに使っても「問題ない」と主張した。だが、その根拠は工事の詳細を定めた設計概要説明書ではなく、説明書の内容をかいつまんで要約した「設計の概要」だった。
実は、工事の進め方をより詳しく解説した「設計概要説明書」では、先に埋め立てが済んでいる大浦湾側の埋め立て区域の「中仕切岸壁」を使って埋め立て用土砂を陸に揚げることが明記されている。県は護岸と中仕切岸壁は明確に区別されているとし、岸壁ではなく護岸を使って土砂を陸揚げすることは「願書の記載と異なる」と問題視。岩屋防衛相の発言も矛盾しているとして非難している。
県幹部の一人は「岩屋防衛相は(会見で)明らかに『中仕切り岸壁に』(陸揚げする)という部分をあえて削除している。自分たちで出した資料を都合のいい所だけ切り取り、こんな不正確な説明をするのは極めて不誠実だ」と指摘した。自衛隊の地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」に関する防衛省の調査結果に事実と異なる記載が見つかった問題にも触れ「やっている事を正当化するためなら何でも言うのか」と批判した。
県は護岸の使用を受け、防衛省に工事中止を求める行政指導を実施した。これまでも指導を重ねているが、防衛省が従ったことはなく今回も応じない可能性が高い。県はその事も認識した上で、法廷闘争と対話路線を並行して進め、全国・海外に民主主義の危機として訴えていく考えだ。玉城デニー知事は11日、全国を行脚して基地負担を訴える全国キャラバンを始動させた。