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デニー知事をフジロック出演に導いた “キーパーソン”の熱い思いとアトミックカフェ


この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子
ギターを演奏する玉城デニー知事=7月、沖縄県内

 国内外のビッグアーティストが出演する日本最大規模のロックフェス「フジロックフェスティバル」が26日、始まった。今年も26日から3日間、新潟県湯沢町の苗場スキー場で開催されている。28日には沖縄から玉城デニー知事がフェス会場内の「アトミックカフェ」に出演する。それにしてもなぜ、沖縄県知事がロックフェスに出演することになったのか。3年前のフジロックに同僚と行ったロック好きの記者が、アトミックカフェの歴史から知事出演に至る経緯を探ってみた。(田吹遥子)

フジロックフェスティバルの様子

 ■テーマは「自然との共生」   

 フジロックフェスティバルの公式ホームページによると、初開催の1997年以来「自然との共生」をテーマに掲げ、「自然環境や社会課題を考えるキッカケを提供する」とする。  

 これまで、会場内で環境、平和、人権などのNGO団体によるステージアピールやNGOヴィレッジの開設、太陽光発電などのクリーンエネルギーの導入などを実施してきた。

■福島原発事故後に”復活”の「アトミックカフェ」 

 玉城知事が出演するのはフェス会場内に設置される「アトミックカフェ」だ。アトミックカフェは脱原発をテーマにした音楽イベントとして、フジロックが始まる前、1980年代に始まった。90年代にいったんは途切れたが、2011年の東京電力福島第一原発事故後、フジロック会場内にある新エネルギーを使用するエリア「AVALONフィールド」に”復活”した。脱原発や自然共生をテーマにしたトークライブを開催。2016年には安全保障関連法や言論の自由についてのイベントを開催しテーマを広げた。若者グループ「SEALDs(シールズ)」の奥田愛基さんとジャーナリストの津田大介さんがトークライブをし、話題となった。

アトミックカフェが行われているステージ(アトミックカフェ提供)

■知事をフジロックにつなげた”キーパーソン”  

 なぜ今回、沖縄がアトミックカフェのテーマに選ばれたのだろうか。複数の方面からテーマに沖縄を提案する声があった中、熱い思いを胸にフジロックと沖縄をつないだ女性がいる。その女性はゆかりさん(53)だ。ゆかりさんは、BRAHMANのTOSHI-LOWさんをはじめとするミュージシャンたちとNPO法人「幡ヶ谷(はたがや)再生大学復興再生部」を立ち上げ、長期的な災害復興支援の活動をしている。被災地に赴く傍ら、沖縄にも足を運び沖縄戦体験者の聞き取りや新基地建設が進めらている名護市辺野古で話を聞いてきた。2016年にもTOSHI-LOWさんやロックバンド・ELLEGARDENの細美武士さんらと、新基地建設現場となっている名護市辺野古や米軍ヘリパットの建設現場だった東村高江を訪れた。今年4月にも沖縄本島北部を中心に巡るスタディーツアーを開催した。

キーパーソンの1人であるゆかりさん=4月、那覇市の琉球新報本社

 ゆかりさんが沖縄でのスタディーツアーを企画し、アトミックカフェで沖縄をテーマにすることを提案したのも「沖縄の現状を知ってほしい」という強い思いが根底になったからだ。ゆかりさんはこれまで「沖縄で米軍基地に関連する事故や事件があっても本土とは温度差がある。同じ日本なのに何でだろう」と感じてきた。いまだに基地があることにも「戦争が終わっていない」という感覚を抱いてきた。必要という人にも自分の住んでいる場所なら嫌がる人がいるという点は原発問題にも似ているとも話す。イベントを通し「沖縄のことを自分のことに近づけて考えてもらえればいい」と語った。

 「沖縄では辺野古移設問題やそれに伴う県民投票もあった。選挙のたびに辺野古移設反対が多数を占めるが、建設が強行されている」。アトミックカフェの代表を務める大久保青志さん(68)も政府の姿勢を疑問視する。AVALONフィールド内で人権や平和に関する活動をするNGOを紹介する「NGOヴィレッジ」の村長も務める。今回、NGOヴィレッジには「うちなーヴィレッジ」と題した沖縄のブースも3日間設置される。そこではアート作品の展示やワークショップを行う予定だ。大久保さんは「アトミックカフェやNGOヴィレッジは社会課題について知ってもらうことが趣旨だ。今回は沖縄のことを知るきっかけにしてほしい」と期待を込めた。

フジロックフェスティバルの様子