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<うちなーEYES グローバルMIND>36 遠山光一郎 リー・クアンユー氏生誕100年 発展への功績振り返る 成長戦略 沖縄の参考に


<うちなーEYES グローバルMIND>36 遠山光一郎 リー・クアンユー氏生誕100年 発展への功績振り返る 成長戦略 沖縄の参考に LKY100のイベント会場
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 シンガポール建国の父と呼ばれるリー・クアンユー氏は、2015年に亡くなるまでシンガポールの発展に貢献した。功績は数えきれないが、小さな都市国家に世界トップクラスのシンガポールエアラインとチャンギ空港を実現させ、独特な政治体制と教育制度を構築し、世界中からの投資と企業誘致を成功させた。個人的には独立当初から植樹活動を進め、成長と共にガーデンシティーと呼ばれる都市をつくり、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイなど超大型植物園を実現したことが特に素晴らしいと感じる。

 今年は彼の生誕100周年(1923年生)。功績をたたえるため「LKY100」をテーマとした番組制作、展示会、記念貨幣発行などさまざまなイベントが行われている。LKYとは「Lee Kuan Yew」の名前を表す3文字で、シンガポールでは彼を「エルケーワイ」と表現することが多い。

 清潔でリッチな印象のシンガポールだが、独立当時の1人当たりGDPは日本の約半分程度だった。私も改めて、LKYの特集番組を妻と見て当時の話を聞いたが、特に70年代から90年代の30年間の急成長は大胆に行われている。LKYが退任した時、現在のシンガポールの若者の多くは、まだ生まれていなかった。今回のイベントはLKYの貢献に対する認識を高める意義も大きく、私も妻と共に子供たちにシンガポール発展史を伝えることができた。

 私は94年にシンガポールに来てから二度、肉眼でLKYを見たことがある。一回目はシンガポール国立大学在学中に大学講堂での演説時、二度目はイベント会場でのビジネスセミナーで彼が登壇した時である。長身でドスの効いた声で理路整然と発言する彼に見とれ、彼がまさに命を懸け推し進めたシンガポール成長戦略を、沖縄の発展のために当てはめることができないかと夢見ながら聞いていたことを懐かしく思い、改めてLKYがいなければシンガポールの輝かしい発展はなかったと実感する。

 クリーンな政治ということもLKYは大事にしていたが、皮肉にも今年、シンガポールでは閣僚や国会議員が不祥事で解任、取り調べを受ける事件が相次いでいる。LKYは今何を思うであろうか。

(シンガポール通信員)