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「戦争準備」に痛む心 新里正子さん(6) 家族を失って<読者と刻む沖縄戦>


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 新里正子さん(84)=読谷村=は1939年5月の生まれです。この年、両親を病気で失い、自身も病で苦しみます。「アタビー(カエル)やハルエンチュウ(野ねずみ)を食べて、生きのびました。貴重なタンパク源でした」と話します。
 沖縄戦で生死の境をさまよった新里さんは、自身の体験を語ることはつらいと言います。「戦争の話をすると、逃げるのに必死で死体を踏んだこと、人間の体からうじがわいたこと、一緒に捕虜になった家族が引き裂かれたことなど、身震いするくらいつらい」と明かします。
 それでも、二度と戦争を繰り返してはならないという思いで体験を語り続けています。
 《沖縄の地上戦、空からの空襲、あのむごたらしい戦は二度としてはいけません。戦争体験は思い出すのもつらいけれど、私も84歳。生きているうちに平和の願いを込めて、体験者として伝えていきたい。》
 最近の防衛力増強の動きが気になります。新里さんは「嘉手納基地の無人機など、今のわさわさー。戦争準備が始まっているのでは」と危惧します。
 《沖縄の人々にとって戦後はまだ終わっていません。辺野古新基地建設、宮古の弾薬庫の建設、八重山の日米共同訓練、与那国の武力攻撃事態を想定した有事島外避難の住民説明など、戦争の準備をしているようで、毎日報道されるニュースに心を痛めています。》
 「戦争は恐ろしい。繰り返してはいけない」。新里さんは若い世代に呼び掛けます。
 《戦争ほど恐ろしいものはない。社会全体で平和を維持する努力と勇気をもって行動することを切に願っています。戦争は誰のためにもならない。不幸をまき散らすだけ。次の世代を担う若者も一緒に考えてくれることを望みます。》
 (新里正子さんの体験談は今回で終わります。連載「読者と刻む沖縄戦」の年内分は終了し、今後は随時掲載とします。)