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キングス・岸本選手も難病のIBD、スポーツの第一線から「患者に勇気を」 寄付や長期療養児に支援


キングス・岸本選手も難病のIBD、スポーツの第一線から「患者に勇気を」 寄付や長期療養児に支援 チャリティーコラボTシャツを着た千葉J・原選手(左)と琉球・岸本選手=4月2日、千葉ポートアリーナ(千葉ジェッツ提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 共同通信社

 免疫機能の異常で消化管に炎症や潰瘍ができる指定難病の炎症性腸疾患(IBD)。症状が治まる寛解になっても、再燃する恐れは常にある。それでもスポーツの第一線で活躍する患者が増え、彼らは「患者に勇気を」と口をそろえる。

 人気沸騰のプロバスケットボールBリーグ。今年5月、シーズンの覇者を決める決勝でぶつかった琉球ゴールデンキングスと千葉ジェッツの双方に、IBDの潰瘍性大腸炎を患う選手がいた。

 琉球は司令塔の岸本隆一選手(33)。千葉はディフェンスの要・原修太選手(29)。下痢や血便に長く悩まされ、原さんは2018年夏、岸本さんも20年春に診断された。

 今のプレーぶりや体格からは、難病を抱えるとは見えないが、ともに発病時は体重が約10キロも落ちたという。今回は岸本さんの琉球が優勝したが、原さんも日本代表に選ばれ、ワールドカップ(W杯)に出場した。

服薬と点滴続ける

 病気と分かる前は人に相談できず「遠征に向かうバスの中で、トイレの不安から腹痛になったこともある」という原さん。寛解となった今も、毎日の服薬と2カ月ごとの病院での点滴は欠かせないが「退院後は腹痛すら起きてない」と笑う。

 優勝祝賀行事が続いた岸本さんも「体調に問題は出なかった」。発病後は妻が栄養学を学び、食事に生かしてくれる。「バランス良く、腹八分目」を心がけているというが「この病気は十人十色。その人に合う食事や薬は必ずあると思う」と力を込めた。

 原さんは発病時、プロ野球オリックスで活躍する同じ病気の安達了一選手の存在を知り元気づけられたという。そのため病気を公表した岸本さんにすぐ連絡した。岸本さんも「励みになった。今では彼との試合は特別な思いになる」と語る。

 2人は今年、コラボTシャツを作り試合会場で販売。売り上げの一部を日本炎症性腸疾患協会に寄付した。原さんは、病院訪問や患児の試合への招待など長期療養児の支援も続けている。

患者の希望に

 スポーツで活躍する患者はほかにも。武田薬品工業が患者支援で行ったIBDアスリート向けメニュー開発にはバスケやサッカー、ラグビー、野球、陸上、ボクシングなどの10人が協力した。

 その一人が17年にクローン病と分かった総合格闘技の征矢貴選手(29)。一度再燃したが22年4月、RIZINでの復帰戦でKO勝ち。「同じクローン病患者の希望になれたら」と語る。

 「発病後は効率的な練習を考え、早く強くなれるようになった。病気になって終わりではない」と征矢さん。原さんも「病気で何かを失った感覚はない。バスケができる幸せを感じ、自分に自信を持てるようになった」。皆、一様に前向きだ。

 来季に向け練習を始めた岸本さんは「病気になっても普通にトップを目指していいと伝えられたと思う」と、優勝の意義をかみしめる。W杯で活躍した原さんも「元気にプレーすれば同じ病気の方を勇気づけられると思っていた。病気がつらくても焦らず、僕や岸本さんの試合を見に来て」とエールを送っている。

(共同通信)