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沖縄のHIV検査、多言語化を 職場健診のオプション追加で検査アクセス向上も 性感染症セミナー


沖縄のHIV検査、多言語化を 職場健診のオプション追加で検査アクセス向上も 性感染症セミナー 米国や欧州での経験を語るベン・コリンズさん(左)と通訳を務めたウィリアム・ダンクリーさん=11月26日、浦添市
この記事を書いた人 Avatar photo 吉田 早希

 琉球大学病院第一内科と県HIV臨床カンファレンスは11月26日、「開業医のためのHIV・性感染症セミナー」を浦添市のP’s SQUAREで開いた。杏林大総合政策学部の北島勉教授が県内で実施した多言語に対応したHIV検査会の詳細を報告したほか、HIV陽性を公表し、欧州エイズ学会などでの経歴を持つベン・コリンズさんが、地域性に応じた予防戦略の重要性を語った。

 北島氏は、在留外国人のHIV検査や医療アクセス改善に向けた研究班代表として活動する。この日は2022年10月~23年10月に県内で複数回実施した在留外国人対象の検査会について報告した。HIVに加え梅毒、23年度からはB型肝炎の検査にも対応した。

 計42人が検査予約し、28人が受検した。多言語による広報とウェブ予約対応、必要に応じた遠隔通訳を導入することで、在留外国人にも検査機会を提供できるとし、北島氏は「保健所やクリニックでいかに多言語化していくかを考える必要がある」と語った。

 予約時調査に回答した42人を年齢別にみると、20代が最多で60%、30代が26%などと続いた。HIVの郵送検査を受けたいかという質問には、母国語のサポートの有無に関わらず約8割が検査を希望するなど、関心の高さが表れた。

 出入国在留管理庁によると、22年末時点の県内在留外国人(国籍別割合)はネパール、中国、米国、フィリピン、ベトナムなどと続く。北島氏は、今回相対的に参加が少なかったアジア諸国出身者へのアプローチを課題の一つとして挙げた。また、HIVや性感染症の検査を職場健診のオプションとして追加することで、技能実習生らの検査アクセスを高める方法になり得るとした。

 後半は、コリンズさんによる講演があった。米国出身のコリンズさんは1982年頃、サンフランシスコでHIV陽性が分かった。以降、HIVの予防啓発活動やピアサポートに取り組んできた。2000年代初めにイギリスに移住。現在はロンドンを拠点に、早期検査の促進を目的とする欧州のHIV・性感染症の検査週間にも携わっている。

 コリンズさんは、HIV感染率が低い地域では、HIVが話題に上る機会が少なく「HIVに対するスティグマ(差別や偏見)が高いということでもある」と指摘。HIV流行に大きな影響を受け、有効な対策を取るために鍵を握る人々を指す「キーポピュレーション」を把握する重要性を強調した。

 世界中で話題になっている、内服薬でHIVを予防する曝露(ばくろ)前予防内服(PrEP=プレップ)は「あくまでも予防戦略の中の一つ」であるとし、「U=U(効果的な治療を続けていればパートナーにHIV感染させるリスクはない)のメッセージなど、偏りなくアプローチする必要がある。沖縄や日本の地域性に応じた対策を練り、複合的予防戦略として掲げる必要がある」と語った。

 琉球大学病院第一内科の仲村秀太医師が県内の状況やHIVの歴史などについて解説し、セミナー進行を務めた。

(吉田早希)