15年前に沖縄に住んでいた時のことです。私はヒューマンドラマやドキュメンタリー映画が好きで、物作りやうちなーぐちの講座も受けたく、那覇市の桜坂劇場に足しげく通っていました。しかし階段だらけのバリアーフル。私が使う電動車いすは重さが100キロで、持ち上げるのも厳しいです。代わりに劇場にある簡易の車いすを借り、それに乗り変え、スタッフに階段を持ち上げてもらっていました。たくさんの人とつながれた桜坂劇場が大好きで、今でも帰省の度に訪れます。
先日、東京都内で、ある車いすユーザーが階段しかない劇場で、スタッフに手伝ってもらいながら移動をし、映画を見ました。しかし鑑賞後「次回は他の劇場に行ってください」と言われたのです。スタッフの数が足りなかったり、マンパワーが整わず、手伝いができなかったりすることもあるかと思いますが、利用を拒否するのは差別です。どうやったら利用できるか、一緒に話し合ってほしかったです。
劇場に車いす席があっても、たいてい一番前か後ろのことが多く、スクリーンが見えにくいです。友だちと隣りあって座ることもできません。アメリカの映画館では外せる席がいくつかあり、車いすユーザーもより選択肢があります。
また、ハード面や制度を変えず、その場にいる人の優しさだけで乗り切るのは、障害のある人を苦しめることがあります。なぜならスタッフの数が少なかったら手伝ってもらえず、手伝ってもらうためには感謝をしないといけない、いい人でいないといけない、というプレッシャーが付きまとうからです。
歩ける人は、映画を見に行く時、階段があったらどうしよう、いい人でいないといけない、なんて思うことはないでしょう。映画館だけでなく学校やスーパー、駅など、あらゆる場所で歩ける人が困らないように、気持ちよく利用できるよう考えられています。しかし車いすユーザーは利用者として想定されていないことが多いのです。
障害者差別解消法が改正され、今月から、障害のある人がない人と同じように生活するための変更や調整をする「合理的配慮」が、すべての事業者に義務化されます。完璧をめざすのではなく、どういう方法ができるか、話し合うことが大切です。いろいろな人が当たり前に一緒に生きています。すべての人が安心して生活できるよう、みんなで考えていきませんか。
いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。