〈ドクターのゆんたくひんたく〉185 片頭痛 軽いうちに病院受診を


〈ドクターのゆんたくひんたく〉185 片頭痛 軽いうちに病院受診を
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 日本人なら誰しも知っている織田信長も片頭痛持ちだったと言われています。1560年5月18日、信長は敵である今川義元の出陣を聞いたものの、全く戦の話もせずにさっさと寝てしまった、と「信長公記」は伝えています。ところが翌日、突然起きあがり家臣に向かって「いざ出陣じゃ!」です。信長が奇襲をしかけるタイミングで、視界も分からないほどの雷雨になり、この悪天候のおかげで有名な桶狭間の戦いに勝利する事ができたとされています。一説によれば、信長は片頭痛で天候の乱れを察知し、戦略に生かしていたとされています。

 機序はよく分かっていませんが、原因の一つに気圧の変化で片頭痛が誘発されるとされています。前日はそれで頭痛が起こり、軍議どころではなくすぐ床についたものの桶狭間の天候の乱れを予想し、戦略に生かしたのではないでしょうか?

 片頭痛は遺伝する事が多く、血縁関係であっためいのお江や、その息子の徳川家光も頭痛持ちであったと記録されています。片頭痛は若い働き盛りの世代に多いとされています。特徴としては片側性(約40%は両側性)、ずきずきとした痛み、動くと悪化し気持ち悪さがある事などで、信長のように床につかないと良くなりません。

 片頭痛は加齢と共に軽減してきますが、痛みや頻度をある程度調節してあげないと、慢性化片頭痛となってしまいます。そうすると常に痛い状態となり、痛み止めが欠かせなくなります。こうなると治療に難渋します。

 片頭痛には予防薬もあります。最近は月1回、自宅で簡単に投与できる注射剤も登場し、ある程度コントロールする事が可能となりました。また最近の研究では、頭痛がない時でも、眠くなったり、集中できなかったり、イライラしたりする場合もあるとされています。

 信長は、本能寺で部下の明智光秀に討たれました。厳しく接したから?などの説があります。ひょっとして、信長もイライラしてつらくあたってしまったのか?片頭痛を調節できていたら、歴史が変わっていたのかも!?と勝手に空想してしまいます。頭痛は軽いうちから、早めに相談するようにしましょう!

 (城本高志、大浜第一病院 脳神経内科・頭痛専門医)