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困ったこと、話し合い調整を<伊是名夏子100センチの視界から>180


困ったこと、話し合い調整を<伊是名夏子100センチの視界から>180
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 今年4月から学校やレストラン、映画館、バスなどの公共交通機関などあらゆる場所で、障害のある人が利用できない時に、どうやったらできるようになるかを考え、工夫することが法律で義務付けられました。夏真っ盛りの沖縄で、今さまざまなイベントが開かれています。車いすユーザーや耳の聞こえない人、目の見えない人、光などが苦手な人、言葉を理解するのに時間がかかる人などが来た時、どんな対応ができますか?

 お金も人手もなく、できることは何もない。今回は対応できても、次はできないかもしれない。手を貸す時に、障害のある人を傷つけてしまわないか不安。などいろいろな悩みがあるでしょう。しかし最初から完璧を目指すのではなく、今はどこまでできるかな、と一緒に話し合うことが大切です。

 ただ話し合いも時に難しく、障害のある人とサービスを提供する側、両者の目的が共有されていることが不可欠です。なぜなら「どうやったら車いすユーザーがお店を利用できるのか」のための話し合いかと思っていたら、相手は「どうやって丁寧に断れるか」がゴールのことがあるからです。お互いに大切にしたいポイントを踏まえながら、歩み寄って話し合うのです。

 階段があって車いすでの入店が難しければ、テイクアウトを提案する、混んでいない時に来てもらい車いすを持ち上げる、階段の下にテーブルを用意し入り口で楽しんでもらう、などいろいろな方法があります。店内を携帯で動画撮影したり、メニューを写メして見せたりすることもできます。障害があっても、障害がない人と同じようにお店を楽しめることが理想ですが、それが難しいなら完璧を目指さず、どこまでできるか話し合い、試行錯誤するのです。

 私は料理教室や講演会などのイベントに参加した時に、終了後のアンケートに「障害のある人が来た時、どうやったら一緒に楽しめるかを考えて、調整することが法律で義務付けられました。すべてのイベントで完璧に対応してほしいわけではなく、まずは一部のものに手話通訳をつけたり、車いすの人が利用できる席を作ったりしてほしいです。また介助者割引もあるとありがたいです」と書くようにしています。

 法律はできて終わりなのではなく、使っていくことが大切です。少しずつ積み重ね、障害のある人もない人も一緒に楽しめることが当たり前になるといいなと思っています。


 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。